
“i☆Ris 2nd Live Tour 2016 〜Th!s !s i☆Ris!!〜”。一ヶ月に渡り、福岡、北海道、宮城、大阪、愛知と巡ってきたこのツアーも本公演が最終日。チケットはSOLD OUTと言うこともあり、会場のZepp Tokyoは満員の状態。サイリウムと物販のTシャツを着たファンでフロアは埋め尽くされていた。そんな熱気が充満していたこの日のライヴは、オープニングのレーザー演出を経た後「ドリームパレード」で開幕。ステージ上の扉から燕尾服調な衣装を身にまとったメンバーが飛び出した瞬間、会場からわっ!と大きな歓声が弾けた。フロアには色とりどりのサイリウムが突き上げられ、歌とパフォーマンスに呼応して動いている。その様はまるでステージの上から吹く風に揺れる花のようだ。
緑、青、紫、赤、橙、黄、白。
視覚的な色彩の祭典の基盤となっているのは、もちろんステージ上のパフォーマンス。
カラフルなサウンドの波を乗りこなすように、歌い、舞い、跳ねる。
ステージとフロアの色がお互いに混ざり合い、秒単位で移り変わる。
七色の花園が空間を彩り、メンバーを祝福している。これ以上ないほど美しい光景だ。
続いて投下されたのは「ブライトファンタジー」。2ndアルバム『Th!s !s i☆Ris!!』と同じ流れだが、のっけからのキラー・チューン連発に大きな歓声が上がった。クラウドが蠢めいて、熱気が渦を巻く。序盤であるにも関わらず、盛り上がりは一度ピークを迎えて弾けたと言っても過言ではない。
リーダー山北早紀の「始まりました“Th!s !s i☆Ris!!”! みんな盛り上がっていこー!」の声とともにこのシークエンスを締めたのは「§Rainbow」。軽やかなダンスと歌声が心地よいこの曲では、メンバーの笑顔が映えていたのが印象的だ。スーパーボールのように跳ねて翻弄し、その動きから目が離せない。
鳴り止まない拍手と歓声の中、ここでMCタイム。恒例の自己紹介からの一言を一通り終えた後、山北から「よし! みんな! テンション最高だから休憩しないですぐ行っちゃおう!」と、性急に次のフェーズへ。このマイクパフォーマンスだけで、今、どれだけ乗っているかがわかる。
MC後からはi☆Risの持つ多面的で振り幅の広い楽曲を中心に展開する。まずはシリアスかつクールな趣の通称“カタカナシリーズ”から「ユメノツバサ」「ココロノオト」をメドレーで披露し、山北・芹澤のデュエット曲「Over the future」へ。これまでのi☆Risからすると異色の君合わせだが、芹澤の伸びやかな高音パートと、山北の盤石の低音パートが見事に折り重なり、凄まじいまでの覇気を見せつけた。
続いたのは若井のソロ曲「My Bright...」。先ほどの「Over the future」を凌駕するハードなロックナンバー。エッジの効いたギターと叩きつけるドラムを背負いながら、己の意思を叫ぶかのように歌う圧巻のパフォーマンスには思わず息を飲んだ。若井友希のヴォーカリストとしての底知れない実力を目撃した瞬間だ。
デュエット曲が続くかと思いきや、ここで「鉄腕ガール」。ケイティ・ペリーを想起させるサウンドと、コミック的世界観が交わったポップチューンが、ステージをコミカルな雰囲気に切り替える。こんな風に様々な曲調をアラカルトのように満喫できるのも、i☆Risのライヴの醍醐味と言える。
そして茜屋・久保田・澁谷による「Secret Garden」へ。
夢から覚めぬ意識を覚醒させたのは、四つ打ちビートとエレクトリックなサウンド。「Baby...」だ。クール・ビューティなi☆Risが顔を出し、あっという間に世界を塗り替える。熱のこもったヴォーカルと、キレのあるダンス。そのパフォーマンスの一瞬に垣間見せる、射抜くような瞳。バラエティに富んだ一連の流れを締めくくるにはふさわしいナンバーだ。
MCを挟んではワンマンライヴ恒例のアフレココーナー。今回は“アイドルオタクになったヴァンパイアの王から、アイドルになるよう命じられた6人のヴァンパイアの娘”というシチュエーションのドタバタ劇。娘たちが王様から課せられた<自分のキャッチコピーを覚える事><ダンスを踊れるようになる事><歌詞を考える事>というミッションに挑む内容だが、キャッチコピー部分では、それぞれの自己紹介コピーをパロディにして会場とコール&レスポンスをするなど、虚実入り乱れるアドリブの応酬でステージとフロアに絶妙なコミュニケーションが構築されていた。この<歌詞を考える>というミッションの流れから「Vampire Lady」へ。コミカルな世界観と振付けがとにかく楽しく、アイドルとしてのi☆Risの魅力を十全に満喫できる曲だ。ステージで繰り広げられるハチャメチャなダンスとヴァンパイア・ハザードはそれだけで寸劇以上の沢山のストーリーを想起させた。
ここで小休止があり中盤戦へ。白を基調にした星型のスカートが目を惹く衣装に着替えたメンバーが、傘をさして「YuRuYuRuハッピーデイズ」を披露するところからスタート。女子力高めのキュートな歌だが、傘を使った振り付けと演出がとにかく秀逸だ。くるくるまわる傘に表情を。ゆらゆら揺れる傘に感情を。中盤で繰り広げられる若井と澁谷の寸劇も見所。先ほどのアフレコとはまた別の声優i☆Risの魅力が楽しめる。間髪入れず「キラリ」へ。春の別れを歌った切ないメロディが胸に染みる。すでに初夏の季節だが、桜が舞い散っているような物悲しさが会場を包み込む。軽やかな歌声が、その上を春風みたいにそっと吹き抜けていった。若井の「まだまだ飛ばしていきますよー!」という宣言から、天井をぶち抜くようなイントロで「Happy New World☆」が炸裂。パワフルなパフォーマンスにフロアが大きく沸いた。
短めのMCを挟んでの後半戦は「Fanfare」で文字通り幕を切って落とした。アッパーなサウンドと高らかな歌声が、ここからの怒涛に展開を予想させ、アドレナリンが一気に吹き出す。そんな期待に応えるように「Make it!」が花火のように打ち上がる。最大級の歓声がオオオオと空気を揺らす。サビの「Make it!」の部分で茜屋が「みんな一緒に! 行きますよー! せーの!」とアジテートし、一斉にサイリウムがフロア中に咲く。そこから「幻想曲WONDERLAND」。久保田の「あれー?ここどこだろう?」「お台場ー!」というお馴染みのコール&レスポンスからスタートする不思議の国への5分半の旅。目眩く転調と同期して繰り広げられるファンタジックなパフォーマンス。旅を終えた後に毎回変わる久保田の一言は「私はみんなが大好きです。みんなも私たちのこと大好きですか?」。その言葉に「大好きー!!」と一体となった声援が飛んだ。
ステージはここで最後の加速をみせる。続いて投下されたのは「Realize!」。彼女たちが主要キャストを務めるTVアニメ『プリパラ』で、困難を切り抜けて夢を勝ち取った曲でもあるこの曲は、i☆Ris自身にもオーバーラップする感動的なアンセムだ。圧倒的なカタルシスを伴うアッパーなサウンドに突き動かされて、一体となった会場はここで一度クライマックスを迎える。
本編最後は「Goin’on」茜屋が「最後に皆さんの100%の笑顔をください!」と叫んでスタートしたかと思えば、ドン!と大砲が轟き色とりどりの銀紙テープが降り注ぐ。日常に寄り添いながらも、一歩一歩の力強さを感じさせるポジティヴなこの曲を聴きながら、きらびやかな希望が舞い落ちる光景に笑顔にならずにはいられなかった。
アンコールではZepp Tokyo限定のツアーTシャツを着用したメンバーが「Ready Smile!!」を披露。初めてステージで見るというファンも多いであろうこの曲を、食い入るように観ていた。この曲終わりで8月3日(水)に13thシングルの発売日が決定したこと、こちらは芹澤が出演しているTVアニメ『双星の陰陽師』の7月クールのオープニングテーマ曲に決定したことが発表され、大いに湧いた。そこで若井が「アニメの曲も歌わせていただいているんですけど、やはり私たちの原点はこの曲なんです。この会場をそれぞれの“Color”で染めてください!」とデビュー曲「Color」へ。i☆Risの原点となる大切な一曲が、この日この時を祝福するかのように、ステージに6色の花を添えた。
最後のMCへ。ここはメンバーから一言づつ。
澁谷「去年、このステージに立っていた時はロングのツインテールだったんですけど、色々ありまして。性転換ではないんですけど(笑)、ただこういったことをやりたいとスタッフの皆さんに話した時にお前はその路線でいいよと受け入れてもらえたことが…正直受け入れてもれえなかったらどうしようって。こんなキャラクターだし調子乗ってるとかすぐ言われるし。出る杭はすぐ打たれるからしょうがないと思う。でも、自分がやりたいと思っていた道をどんどんどんどん進んでいきたいと思っているので、できることならこの先も澁谷梓希を長い目で見ていただけたらと思います。澁谷はみんなを絶対裏切りません!大好き!」
久保田「昨年のZepp Tokyoから1年でこんなにi☆Risのことを好きと思ってくれる人が増えたって思うし、久保田未夢のことも好きだよって言ってくれる人も増えたし、本当に嬉しいなと思うし…未夢のこと好き? 私も生きてきた中でこんなに好きって言われるの初めてですよ(笑)。うれしいね。未夢もみんなのこと好きだから、この気持ちがどんどん続いていって、これからもこうやって“今日楽しかったね”って笑っていられるように居たいなと思います」
若井「去年1年は色々悩んだというか…『My Bright…』の歌詞もそうなんですけど、もがいてもがいて来た1年ですけど…今の自分は確実に成長してるって言えます。ツアー中に悩むことや考えることもあったけど、その悩みが武道館とかに向かって形になっていくと思うし…なんだかんだ私は大丈夫なんで、期待してこの1年見届けてほしいと思います。これからも…一番近くは武道館に向けてなんですけど、もっともっと私たちに期待してほしいと思います」
茜屋「今日ここに来れなかった人たちにも感謝の気持ちでいっぱいです。というのも、ツアーが始まるまで正直すごく怖かったんですよ。私もツアーの前に色々悩んで、考えて、上手くできなかったらどうしようと、いつも以上になぜかすごい不安になって、ステージに立つのがすごく怖かったんですけど、今日めちゃくちゃ楽しかったんですよ。なんでこんなに怖かったんだろうなって。でも、ステージに立って、こうやって沢山待ってくれている皆さんがいるから、こんなに楽しいんだなってこのツアーで改めて感じて。ステージ中も“あ、どうしよう”と思ったときもみんなの顔を見たら一瞬で不安が吹き飛んで。だから、いつも応援してくださってる皆さんにはいつも感謝の気持ちでいっぱいです。去年のツアーは技術面で成長できたと思いましたが、今回のツアーは精神面で皆さんに支えられて成長できたと思うので、この後も結成4周年や武道館があるので、どうか皆さん、私たちについてきてください」
芹澤「一番最初の『ドリームパレード』のときにみんなのサイリウムが綺麗だなって思ったんですけど、ライヴって自分一人でやってるものじゃないなと思って。今日完璧に踊れた!と思っても、目の前の君が!君が君が!みんなが!笑って楽しんでくれなきゃ、何の意味もないんだなとこのツアーで思って。私はライヴが好きだからこの先もきっとやり続けるんでしょうけど、この先も皆がいないとライヴじゃないし、皆がいないと優じゃないしって最近思います。みんなが私という人間を作っているような…そんな感覚を味わったツアーでした」
山北「私、実は去年のツアーのZepp Tokyoが一番コンディションがいいなと思ってたんですよ。それ終わってから、こう見えて25歳になったんだけど、ぶっちゃけちょっと疲れやすくなったかなと。これが25歳の壁かと思いつつ、若干悩んでいた時期もあったんですけど、今回ツアー中に漢方飲み始めたの。気づいちゃったんだよね…。でも今回、福岡、北海道、宮城、大阪、愛知とやってきたんですけど、どんどんお客さんが増えていったんです。それと同時に私たちのパフォーマンスの精度も上がってきているので、本当にみんなに支えられているんだなと。みなさんが愛を持って一人一人がライヴに挑めば、私たちもドンドンドンドンすごいライヴが作り上げていけると思います。人生1回きりでこんな素敵なステージに立たせてもらって、やりたいことやらせてもらってるので、25歳って上の人からしたらまだまだ若いよって感じらしいので、私はおばちゃんになるまで頑張ります。」
最後は「Raspberry night」。スモークがステージに送り込まれ、足元に雲を作りだす。夕日のように茜色に輝く照明。舞台装置の幕に投影される空の色。移りゆく景色と時間と感情の中で、迷いながらも何かを見つけて、決めて、進む。そんな歌詞の内容が先ほどのMCの内容とオーバーラップする。だけど、i☆Risはいつだってその先へ踏み込んできたし、一気に空の上まで飛んでいく大ジャンプだって見せて来た。カラフルで、ポップで、ロックで、クール。様々な表情に魅了されながらも、どこかで必ず涙が溢れる。いつも何かに心が突き動かされる。それは、i☆Risのライヴが、移ろいゆく景色と時間と感情の流れの中で、それぞれが決めて進んだ何かが交わる一瞬の火花だからなんだと思う。