
筆舌に尽くせない。
長時間の煩悶の末にようやく出てきた書き出しがこれである。如何なる言葉を用いても手のひらからこぼれ落ちる砂のように脆く、筆勢に任せたところで心だけが追いつかぬ。
表現できない。
伝えきれない。
それほどまでの感動を得たとしか言いようがない。けれども綴らずにはいられぬのは、あの日あの時あの場所でこの公演を目撃した者の務めのように思えるからだ。こぼれても掬って綴り、追いつかずとも語る。それを繰り返しても尚、伝えきれぬからこそ、我々はこの“筆舌に尽くせない感動”の偉大さを実感できるのだろう。一瀉千里と行かぬからこそ、ずっと語り続けていきたくなる宴だった。
前段が縷々綿々となってしまい大変申し訳ないが、“i☆Ris 4th Anniversary Live〜418〜”そういう公演だったのだ。
タイトルの<418>とは、この日がi☆Risのデビューから4年と18日にあたることから来ているという。その期間を経たメンバーの成長と活動の集大成という見方もできるが、この歳月はi☆Risをこれまで応援してきたファンにも当てはまるのではないだろうか。出会った時やユニットの可能性を信じた瞬間は様々だと思うが、この日の日本武道館を埋め尽くした人々も、ニコ生のディスプレイの向こうから目撃した人々も、新しいも古いもなく誰もが<418>の中で出会ったことに違いはなく、その数字の前ではことごとく等しい。i☆Risとファンの4年と18日が結実した奇跡の一夜。これはその記録のひとつである。
2016年11月25日(金)に日本武道館で行われた本公演は、メインステージ上にはメンバー色の回転木馬が配置されているのが目を惹き、その他観覧車やジェットーコースターのモチーフが飾られているなど、遊園地をイメージした趣向が凝らされていた。ステージ上部には6枚のスクリーン。メインステージから伸びるランウェイの先に小規模なセカンドステージが設置されており、2ステージを活かした多面的な演出が期待できる。
開演の18:30丁度に照明が落ち、歓声と同時にスクリーンに“2012 11 07”の文字が写し出されカウントがスタート。デビューから現在に至るまでの映像が流れ、これまでの“物語”を紐解いていく。奈落からせり上がり、ステージに現れたメンバーがあの独特な配置とポーズを取った。
「あれ〜? ここ、どこだろう?」と久保田がお馴染みの一言を呟くと会場中から待ってましたとばかりに「ぶどーーかーん!!」と声が上がった。「幻想曲WONDERLAND」だ。変調目まぐるしいファンタジックなサウンドとメロディがあっという間に客席を“遊園地”の世界へと誘っていく。3階席の上からアリーナ席の隅々まで揺れるサイリウム。それらの一つ一つがデビューからこれまで出会ってきた人々の想いを灯している。それを知っていたのか、必然の一致だったのだろうか。恒例の久保田による曲終わりの一言は「ここまで信じてついて来てくれて本当にありがとうーー!」だった。応える光と歓声に、皆の中にある「出会えてよかった」「信じてきてよかった」という愛がこれでもかと込められていた。
そこからデビュー曲の「Color」へ。全ての始まりのメロディと歌声が、天井高い武道館の屋根を突き抜けてさらに伸びていく。スクリーンに投影された青空もミュージック・ビデオを思い出させ、記憶を一気に4年18日前に引き戻す。前述の久保田の一言を踏まえるとこれ以上感慨深いものはない。続くのは「ミラクル☆パラダイス」。ドン!という音とともに打ち上げられた銀テープが舞い落ち、アッパーなサウンドと歌声が綺羅、星の如くフロアを魅了する。目標だった“日本武道館”という場所を皆と共有し、“4周年”だということを想起させるデビュー曲の披露。そしてフロアを沸かせ“祭り”であるエンタテインメント性を提示する。冒頭3曲だけでメンバーと観客の心を繋ぎ、同じ方向に視線を向けさせる見事な構成だ。
自己紹介MCを挟んで始まったのは「YuRuYuRuハッピーデイズ」。傘を使った軽やかなダンスと鮮やかな歌の中に、女子の日常が見えてくるキュートなガーリーソング。途中の澁谷と若井がカップルに扮する一幕も「急いでばっかだと色々見落とすぞっ!」「色々ってなんだよ?」「みんなの家族が来てくれたりとか、デビュー当時のスタッフさんが観に来てくれたりとか」「いつもありがとうございます!」と武道館用のアドリブになっていて客席が大きく湧いた。そのまま「徒太陽」へ。先ほどの雨雲どころか、前日に54年ぶりに11月の初雪が降ったほどのこの日の寒さも吹き飛ばすほどの灼熱のパフォーマンスで一気にフロアの熱を上げる。その後、スクリーンにメンバーが出演するTVアニメ『プリパラ』のキャラクター、ファルルが登場するというサプライズがあり、応援メッセージとともに「みんなが歌ってくれた、あのキラキラポカポカする曲が聴きたいな〜」という曲振りから同作の劇中曲「Love friend style」をSoLaMi Dressingとして披露した。
ランウェイを渡り、セカンドステージへ。
「ここからはちょっと雰囲気を変えて大人の魅力じゃないけど…ね? 全員、二十歳超えちゃったんですよー(笑)。あっという間劇場ですよ(笑)。そんなわけで、ここからは皆さんと近い距離で届けてみたいと思います」という芹澤の言葉通り、踊りを極力抑えたi☆Risの“歌”を聴かせるセクションへ。まずは「Defy the fate」。吹雪く氷原のようなメロディの中で仄かに熱を帯びた声が艶やかさを伴って懸命に燃える。「イチズ」ではセカンドステージがせり上がるという演出で会場から驚嘆の声があがった。重なり合うハーモニーとユニゾンする感情の中に、これまで“一途”に向かい合ってきたそれぞれの気持ちが声色になり明滅する。そしてラストを締めたライヴ初披露となる「鏡のLabyrinth」では、不安と迷いと希望の声がそれぞれの内面の鏡に乱反射する如く会場を交錯していた。ダンスや演技だけでなく歌でも深みのある表現力を示し、“大人の魅力”を見せつけたこの一連の流れは、彼女たちの最もプリミティヴな感情の原石を美しくカッティングした、宝石のような時間だったと言える。
「静かな時間もいいけど、今日来た人たちはどっちかっていうと騒ぎたい人が多いと思うんだよね。血の気を出して、すごく濃くなってると思うので、みんなの血を吸っちゃおうと思います!」というMCの流れから「Vampire Lady」に。セカンドステージからランウェイでオーディエンスに手を振ったり、ハイタッチしたりとコミュニケーションを取ってフロアを沸かせメインステージへ。コミカルな狂騒から一転、「Re:Call」が会場をピンと張り詰めた空気に切り替える。激しいドラムとギターに呼応するかのようにステージのあちこちから炎が吹き上がり、意志を燃やし、魂を鼓舞する。メンバーの一声が、一挙手一投足が、刃となって己の内面の敵を穿つ。印象鮮烈とはまさにこの事だ。その強烈なパフォーマンスに熱く応える者、圧倒される者、羨望する者と、様々な反応が見て取れたのも興味深く思えた。それほどまでの“強さ”を持った曲だということだろう。中盤戦までのラストを飾るにふさわしいクライマックスだった。
●2017年4月〜 全国9ヵ所17公演を巡る“i☆Ris 3rd Live Tour 2017”が決定!
■4月9日(日) 【千葉】市原市市民会館 14:00 / 15:00 18:00 / 19:00 ※昼夜2回公演
■4月16日(日) 【福岡】都久志会館 14:30 / 15:00 18:30 / 19:00 ※昼夜2回公演
■4月22日(土) 【宮城】仙台市民会館 大ホール 14:30 / 15:00 18:30 / 19:00 ※昼夜2回公演
■5月7日(日) 【埼玉】所沢市民文化センターミューズマーキーホール 14:30 / 15:00 18:30 / 19:00 ※昼夜2回公演
■5月21日(日) 【東京】中野サンプラザ 14:00 / 15:00 18:00 / 19:00 ※昼夜2回公演
■5月27日(土) 【北海道】道新ホール 14:30 / 15:00 18:30 / 19:00 ※昼夜2回公演
■6月10日(土) 【神奈川】関内ホール 14:15 / 15:00 18:15 / 19:00 ※昼夜2回公演
■6月11日(日) 【岐阜】長良川国際会議場 17:00 / 18:00
■6月24日(土) 【大阪】NHK大阪ホール 14:00 / 15:00 18:00 / 19:00 ※昼夜2回公演
主催・企画:avex pictures / DIVEU entertainment
i☆Ris HP:http://iris.dive2ent.com/
i☆RisオフィシャルTwitter:https://twitter.com/iris_official_