7月に開幕する東京オリンピック/パラリンピックを前に、新たな「ディスカバー・ジャパン」の動きが広がっている。音楽の世界でも、昨年大いに盛り上がったラグビー世界大会での和太鼓の演出など、外国人向けのおもてなしだけでなく、日本人の奥底にある誇りを呼び覚ますような、「和」の要素が今再び熱い注目を浴びつつある。
日本古来の吹奏楽器・篠笛(しのぶえ)奏者の狩野泰一は、そのキャリアの初めから独自の「ディスカバー・ジャパン」を志向してきた、現代邦楽界の雄だ。87年から10年間所属した、古今無双の和太鼓集団「鼓童」での活動を経て、2005年にメジャー・デビュー。篠笛の普及活動、海外公演、映画音楽、異ジャンルとの多様なコラボレーションを重ね、17年の10作目『SOUND OF THE WIND』に至るまで、伝統と革新を共存させる挑戦的姿勢にブレはない。
そして今、狩野泰一は11作目にあたるアルバム『MATSURI 〜世界の風〜』を完成させた。篠笛にギター、ベース、ピアノ、パーカッションを加えたバンド形式で、サブ・タイトル「世界の風」という言葉の通り、公演旅行で訪れた各国の風景をモチーフに書かれたオリジナル曲を中心に、童謡からジャズまで、意外性に富んだ多彩なカバーも収録した、決定版といえる強力な作品だ。
伝統の凄みと革新の情熱を携え、世界を相手に演奏してきた狩野泰一だから出来うる、「ディスカバー・ジャパン」と「世界とのクロスオーバー」の両立。「令和」の英訳は「Beautiful Harmony」というらしいが、令和2年2月リリースの『MATSURI 〜世界の風〜』はきっと、新たな「和」のイメージを作るさきがけとなり、「Beautiful Harmony」の象徴になるだろう。狩野泰一、最高傑作の誕生だ。