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岡村靖幸が肯定してくれた価値観“ベランダ立って胸を張れ”。
〜11年ぶりの新作アルバム『幸福』がヒット〜

2016年1月27日リリース、岡村靖幸による11年ぶりのアルバム作品『幸福』〈V4 Records〉。2月3日付オリコン週間アルバムランキングにて、自己最高位タイとなる3位にランクインしました。

岡村靖幸といえば、日本のプリンスとでも言うべき、独特な言葉とリズム、圧倒的なライヴ・パフォーマンスでミュージシャンのファンも多数。日本ならではのファンクなポップスを生み出した天才として音楽ファンに愛されている存在です。そもそもはデビュー前、10代の頃から、「My Revolution」などのヒットで知られる渡辺美里へ楽曲提供をしていた逸材でした。その後、佐野元春、大江千里、TM NETWORK、渡辺美里を育てたプロデューサー・小坂洋二に見初められ、黄金期を迎えていくエピックソニーより1986年にメジャー・デビューしたのです。

http://okamurayasuyuki.info/

1990年にリリースした代表曲「どぉなっちゃってんだよ」では、“どぉなっちゃってんだよ、人生頑張ってんだよ”と声を張りながらダンスを踊りまくる姿に心打たれました。しかし、最後には(人知れずに)“ベランダ立って胸を張れ”と叫ぶメンタリティ。なんじゃこりゃ? このぶっ飛んだセンスに驚かされたものでした。しかし、ロックでもファンクでもパンクでもない、日本男子のちょっとこじれた価値観をポップソングにパッケージングした決定的瞬間だったと思います。それでも楽曲ラストでは“無難なロックじゃ楽しくない”と締めるカッコよさ。岡村靖幸は、理想と現実のギャップに押しつぶされそうになりながらも、虚勢を張ってでも主張したい“こじれる想い”を、見事に肯定しきってくれたポップスターなのです。そんなリアルな姿が音楽ファンの共感とリスペクトを生みました。

デビューから30年が経過。岡村ちゃん(岡村靖幸の愛称)は、その間ミリオン・ヒット曲を生むことはありませんでした。しかし「だいすき」、「友人のふり」、「どぉなっちゃってんだよ」、「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」、「カルアミルク」、「家庭教師」など、記憶に残り続ける人気曲を生み出し、いまもなおロックフェスへの出演、新規リスナーを獲得し続けるフレッシュなポップスターとして活躍しています。そんな岡村ちゃんによる11年ぶりの新作アルバム、それが繊細でノスタルジック感に溢れる普遍的な仕上がりが魅力の『幸福』なのです。本作のアートワークは、テレビアニメ『スペース☆ダンディ』の主題歌となった27枚目のシングル「ビバナミダ」に続いて、現代美術家の会田誠とのコラボレーションというのも大事なポイント。完全受注生産デラックスエディションには岡村靖幸 ドキュメンタリーDVD『平熱大陸』も収録されていました。

気になる現象としては、アルバム『幸福』のラストに収録された「ぶーしゃかLOOP」での出来事。2011年にオフィシャルサイト上で公開した本人動画が、なぜか4年後の2015年にVineやMixChannelなど動画共有サービスで中高生が同時多発的にカヴァーしたことでバズったのです。80年代当時、ラジオ番組に出演した際に、“自分はシャイだから、好意を持ってくれる女性がいたとしたら、そんな気持ちを教えてくれる機械があったら欲しい”と語っていた岡村ちゃんでしたが、いまではインターネットがまさに、そんな想いを“いいね”や“二次創作”を通じて可視化するマシーンとして機能しているのだなと感慨深く思いました。

音楽業界内シンパも多い岡村ちゃん。深夜の人気テレビ番組『久保みねヒャダ こじらせナイト』のエンディングに起用され、Base Ball Bearの小出祐介と共演共作した「愛はおしゃれじゃない」は、岡村ちゃん初心者にオススメしたいフレッシュなポップ・チューンです。アルバム『幸福』は、昨今めずらしく配信をしていないので(※)CDの歌詞カードと向き合って、リリックのすごさを体感してみてください。

※2016年2月5日現在

以上、ヒットの現場よりお届けしました!

次回は2月12日更新

ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
Yahoo!ニュース、J-WAVE、MTV81、ミュージック・マガジン、2.5D、音楽主義などで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども手掛ける。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)、DREAMS COME TRUEツアーパンフレットへの寄稿、TM NETWORKツアーパンフレット・シリーズ執筆。SMAPタブロイド新聞フライヤー執筆。メイン取材&100曲解説を担当した『小室哲哉ぴあ TM編&TK編』、4万字取材を担当した『氷室京介ぴあ』(ぴあ)発売中!
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