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【TK全曲解説】
globeデビューアルバム『globe』が20周年!【期間限定プライスオフ配信】

globeの1stアルバム『globe』が、2016年3月31日(木)に20周年をむかえます。デビュー・シングル「Feel Like dance」で奏でられる高揚感が魅力的なポップソングから、ジャングルと歌謡ポップの絶妙なる融合「Joy to the love」、スペイシーなポップチューン「SWEET PAIN」、国民的ヒット曲「DEPARTURES」、世界情勢をテーマにいまの時代とシンクロする「FREEDOM」までの5曲の大ヒット・シングルを収録し、400万枚のセールスを記録した90年代を代表するアルバム作品となった本作。

日本のポップ・ミュージック史に残るアルバム作品『globe』を、mu-moでは期間限定でプライスオフ配信をおこないます!

ヴォーカリスト + ラッパー + プロデューサーという3人組スタイルを発明したオリジナルな活動形態。クラブ・カルチャーを経由した実験的なサウンド・アプローチでありながら、ポップに心に残るメロディーの明解さ。アルバム『globe』の魅力を、その価値を再確認する為にムック本『小室哲哉ぴあ globe編』(ぴあ)での、小室哲哉自身によるアルバム『globe』全曲解説ライナーノーツを掲載します。小室哲哉史上最高の名作アルバム『globe』を、聴いたことある方も聴いたことない方も、この機会に是非チェックを!!!!!!!

小室哲哉によるアルバム『globe』全曲解説ライナーノーツ

1.GIVE YOU
 globeなので“G”からはじまる曲を1曲目に考えました。予約で200万枚入っていたので、爪の先まで神経が行き届いている重圧感なんですけど、遊び心というか余裕がある姿勢をみせたかったんです。当時はアルバムを1曲目から最後まで通して楽しんでもらえる時代だったので、プロローグにはこだわりました。ピアノをたくさん弾きまくっていた状況で、ピアノの前に座れば曲はいくらでも生まれたんです。

2. Feel Like dance
 globeは大人が聴いても楽しめるユニットを意識しました。実際、MARCとKEIKOの二人は20代で若かったんですけど、曲の世界観のイメージは大卒で就職して、その年の夏くらいの女性像・男性像みたいな。そんな世代感を表現しようと思っていました。とはいえ、二人とも音楽アーティストとしたら新人だったんですね。そんな意味では、TM NETWORKやtrfのデビューの状況とは違ったんです。でも、今みたいにSNSがあったワケではないので、謎めいてる感があったかもしれません。KEIKOの歌唱力もまだ未知数でした。後々にだんだんわかってくるんですけど、本人も自信満々でやってきたワケではないんですよね。普通は何年かライヴハウスなどで活動したり、何かしらマイクのコツを掴んだりとか、そんな経験が一切ゼロのままデビューしたんです。なので、負担を軽くしたいという意味でも、この頃はメンバーのヴィジュアル的なイメージを強く打ち出さなかったんですよ。そんな状況を考えて、僕のソロパートも入れ込みました。イメージの分散ですね。曲的にも、僕の中にあるいろんなヒットの要素が詰まっている曲ですね。ある種、trfっぽさもあったかもしれません。そこはフックとしてひとつの狙いでもありました。この曲はピアノでも弾きやすいナチュラルな曲なんですよね。

3. GONNA BE ALRIGT
 ベース、リズム、ピアノだけのシンプルな構成。globeは、人物設定を意外としっかり決めていたので、歌詞を書きやすかったんです。テーマは男女のもつれ。すべてがキラキラしている男女の恋愛感、松本隆さんが松田聖子さんに書かれていたような恋愛、乙女心みたいなものとは間逆なものを描いてみたいなと思っていました。そこが80年代とは大きく違うところかもしれません。90年代っぽいオルタナ感ですね。

4. DEPARTURES
 「DEPARTURES」は、CMタイアップから生まれた15秒〜30秒の作品なんです。当時のCMタイアップの影響力って今と比べ物にならないほどに大きかったんですよ。なので、CMスタッフの人たちとの共同作業でもありました。まず絵を見てから作りました。一番最初は、雪の中を走っている新幹線の映像だけだったんですよ。でも、globeで決めていた登場人物の設定とCMの世界観がぴったりハマったんです。働いている恋人同士が苦労して休みをあわせて休暇をとるという。その限られた時間を、どう演出するかという物語性。でも、頭から終わりまで、一行一行世界観を統一していくのは大変でした。二人が楽してないという意味で。苦労しながらも、恋愛を育てていくという感じをあらわしたかったんです。なのでストーリーがあるわけではなく、コピーライターがキャッチコピーを一行ずつ書くような感じで歌詞をまとめていきました。なので、人によって一行だけでも気に入ってもらえたらいいなと。なので、それぞれ覚えている場所がみなさん違うと思うんですね。みんながここだっていうワードを分散させたかった狙いがあります。それがたくさんの方の心に残った理由だと思っています。いまでこそSNSでどんな箇所に共感してもらえたかという感想を直接届けてもらえる時代になりました。それぞれの共感ポイントって1曲の中でもやっぱりバラバラなんですよ。なので、イントロが鳴った瞬間の感情も人それぞれなのかもしれません。頭のコードもポップスとしてはとても独特なんです。それまでにちょっとなかった曲だと思っています。たしか、CMの方がキーは高かったのかな。今でも、良くこの曲でそんなに枚数がいったなと思いますね。変わっている曲ということは間違いないので。ちなみに、アルバム・ヴァージョンで構成を変えたのは、アルバムの世界観になじむように、自然に流れていくように意識をしました。「DEPARTURES」がメインのアルバムという風にはしたくなかったので、曲順や構成にすごく苦労しましたね。結果、とても満足している楽曲です。

5. Regret of the Day
お酒がある場が似合うナンバー。こんなポップなスタイルはglobeだと最初で最後じゃないかな。アルバムを作っていた時に、このままだと重いデビュー作だなと感じてのバランスですね。この頃は、KEIKOの歌唱力が、伸びも含めてすごいあるな、大丈夫だなと気がつけた時期です。でも、最後まで明るい感じのままで終わりたくなかったので、終わりまで聴くとまた陽と陰の“陰”の部分が垣間見れますね。

6. Joy to the love
男女の屈折した愛情感を表現したかった曲です。今は当たり前ですが、女性が働いていることを前提として書いている曲です。自分で職業を選んだり、道というか、そういうのを持っている女性ですね。でも、どこかで男性を必要としているという。タイトルは、スリー・ドッグ・ナイトってグループに「Joy to the World」って曲があって、そこから借りています。ぜひスリー・ドッグ・ナイトも聴いて欲しいですね。

7. SWEET PAIN
MARCのラップがラガっぽいんですよね。でも、ジャングルというより、スペーシーなダンスミュージックで。このころ、マイアミで今のULTRAにつながるようなブースが出てるんですよ。リフの使い方とか、EDM的なところがあるかもしれません。そんな視点で楽しんでもらえると嬉しいです。1995年って、Windows95が生まれた年で。tofubeats君と話していると、大きな変革の年だったようですね。

8. Always Together
「GONNA BE ALRIGT」と「Always Together」は、Rolandの808を使ってます。あからさまに起用している曲ですね。この曲はヨーロッパ風なバラードなんですけど、メロディの動きが変わっているので、ファルセットだったり、慣れない曲調でKEIKOが大変だったと思います。フィル・コリンズの「One More Night」も同じドラムマシーンを使ってるんですよ。二曲を聴き比べると面白いかもしれません。

9. Precious Memories
実は、ファンの間で一番人気ってぐらい評判が高い曲ですね。渋谷の交差点を想定して作った曲です。カフェから見下ろした雰囲気というか。実際行ったワケではなく妄想ですけどね(苦笑)。歌詞の言葉選びも、時代の変化で古臭くなる単語だったら困るなと思っていたんですけど、かろうじて今でも大丈夫っていう。“アドレス”って言葉もまだ残っているしね。“ヒール”の取り入れ方もまだ大丈夫ですよね(苦笑)。

10. FREEDOM
地球規模の俯瞰視点で書いた曲。アルバムのなかで、これだけは僕が思うことを書かせてもらいました。今の時代の方があっているんじゃないかな。当時、紛争だったり、オウム真理教事件の影響で、テロに対して非常に不快な思いをした記憶があって。その後、9.11が起きて、でも今の時代において実は最初のテロ体験ってオウムだったのかなという。今のイスラム国の問題とも、近いものを感じなくもないですね。

11. MUSIC TAKES ME HIGHER
オルガン、シンセ、ベース、ドラムによるレイヴ感あるナンバーですね。globeは、アルバム一枚で終わるユニットではないんだろうなって思って。いずれはみんなの前でコンサート・ツアーだったり、ライブ・パフォーマンスをする日がくるんだろうなっていうのを想定してつくった曲ですね。ファースト・アルバムなので、その後の可能性を含めて、実はいろんな角度の視点な楽曲が入っているんですよね。

12. LIGHTS OUT
たまに弾きますけど好きなピアノ曲です。この曲だけは個人的な趣味です。足元にも及ばないですけど、キース・ジャレットを崇拝してるので、瞬間でもあの人のフレイバーを自分が感じられたらなっていう曲になっています。アルバムのアウトロとして、総合的に楽しんでもらえるような工夫のですね。アルバム1枚を通して、じっくりと楽しんで欲しいという気持ちのあらわれ。おもてなし感ですよね。

以上、ヒットの現場からお届けしましたー。

次回は3月25日更新

ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
Yahoo!ニュース、J-WAVE、MTV81、ミュージック・マガジン、2.5D、音楽主義などで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども手掛ける。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)、DREAMS COME TRUEツアーパンフレットへの寄稿、TM NETWORKツアーパンフレット・シリーズ執筆。SMAPタブロイド新聞フライヤー執筆。メイン取材&100曲解説を担当した『小室哲哉ぴあ TM編&TK編』、4万字取材を担当した『氷室京介ぴあ』(ぴあ)発売中!
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