「オーケストラ・ピット」の略。ミュージカルでは、ここにオーケストラが入って演奏するのだが、メインとなる演劇や俳優をお客さんがよく見えるように、客席よりも数メートル低い位置にある。通常の演劇などオーケストラを使用しない公演のときは、可動式の床を客席と同じ高さにし、劇場によっては客席として利用することも。
通称「コンマス」。女性の場合は「コンサートミストレス」、略して「コンミス」と呼ぶことも。多くの場合は第1ヴァイオリンの首席奏者がこの職を担う。指揮者の指示だけだと、それぞれの演奏者によって若干タイミングがズレる場合などに、大きく弓を動かすといったオーバージェスチャーで入りの合図を出したりする、とても重要な存在なのだ。
声が大きい人はわからないかもしれないが、カラオケで自分の声が聴こえず、歌いづらいという経験がある人も多い。同じように、演奏者たちも自分の音が聴こえないと弾きにくい。そんなときには「返し」「モニター」などと呼ばれるスピーカーを近くに置き、自分の演奏を聴きながら音を奏でるのだ。ロックやポップのステージでも多く使われる。
新しい曲の楽譜になれるための、最初の演奏のこと。曲全体のイメージをつかむための練習で、誰かが音を間違えても止めずに通して行う。楽器初心者にとっては、楽譜を頭の中で音符に変換し、さらに楽器で音を出すというかなり複雑な行為だ。しかしプロたちは、まるで文章を読むかのごとく、スラスラと演奏してしまう。
最初の音を早く弾いてしまって「飛び出す」だけでなく、指揮者の棒よりも速いテンポで演奏することを「走る」という。また、まわりのみんなが音を切った後も、自分だけが音を出している状態を指す言葉は「残る」。これらは、演奏中にあってはならない一大事。オケでは、指揮者の指示はもちろん、全体のタイミングを合わせることがキモだ。
本番前に、舞台上で行う最後のリハーサルのこと。指揮者や演奏者など、普段の練習で顔を合わせている団員以外のメンバーも勢ぞろいし、本番と同じように行う。ドイツ語のGeneralprobe(ゲネラールプローベ)を略した言葉で、演劇では「ゲネ」「ゲネプロ」とも呼ばれるが、オーケストラの世界では「ゲーペー」が通例だ。
オーケストラの演奏会で、協奏曲など編成の小さな曲を演奏するとき、通常編成から何人か奏者として参加する必要がなくなる。このことを「降りる」といい、その奏者は「降り番」となる。降り番が多いのは管楽器や打楽器で、なかでもトロンボーン奏者はこれに悩まされるのが宿命といっても過言ではない。反対語は「乗り番」。
「トラ」は「エキストラ」の略。人が足りないといった理由から、本来の団員のほかに、外部の人に演奏を頼むことを指す。ドラマや映画の場合、エキストラは名もない“チョイ役”だが、オーケストラでは“立派な演奏者”である。いろんなオケの個性にすんなり合わせられる高い技術力が必要で、プロの中でも凄腕だ。その分、ギャラも結構高いらしい。
打楽器や管楽器だと、演奏しているよりも休んでいるほうが多いという曲がたくさんある。そうした曲で休符を数えているうちに、どこまで数えたかわからなくなってしまい、自分の弾き始めに出られなくなる状態が「落ちる」だ。複雑な曲で一度落ちてしまうと、次に出す音がわからず、そのまま最後まで演奏できなくなる危険も・・・。
弦楽器で同じ譜面を見ている2人組のことを「プルト」といい、指揮者に近い方から、ファースト・プルト、セカンド・プルト・・・と数える。各プルトの客席側にいるファースト・プルトが「表」、その奥にいるセカンド・プルトが「裏」だ。悲しいかな、1人だけあまってしまった場合は、「半プル」「はみプル」と呼ばれるらしい。