アニメーションは絵の動かし方によっていくつかの分類がある。背景などを省略せずに原画を細かく描き、1秒間に24枚の絵を再生する「フルアニメーション」は、より自然で実写的。それに対して、絵の一部を省略し、原画を減らすのが「リミテッドアニメ」。会話シーンでキャラの口元だけを動かしたり、背景は変えずにキャラだけを動かしたりする。
原画と原画の間の絵を描くことで、動きを滑らかにするのが「中割り」。中割りを入れる間隔を変えることで、動きが変化する。先の原画の動作に近づけた中割りを入れることを「先ヅメ」といい、派手な動きになる。反対に、後の原画のほうに寄せるのが「後ヅメ」で、ゆっくりした動きに。パッと素早い動きにしたいときは、補うコマを使わない「中なし」を用いる。
アニメで多用されるのが「目パチ」「口パク」という技法。「目パチ」はキャラに瞬きをさせることで、表情や自然な感じを出す。一方、「口パク」はセリフシーンを表現するために、口をパクパク動かすこと。どちらも限られた時間でアニメを制作できるよう、目と口の動きだけの中割りを描き、動画にする段階で合成することも多いとか。
場面転換手法のひとつで、カメラの絞りを閉じるように、画面の四隅から1点に向かって塗りつぶしていくこと。アニメーションに限らず映画でも使われる技法で、古典的なコメディ作品のラストシーンによく使われている。逆に、1点から絵が見える窓を広げていくことを「アイリスイン」という。
外からの足音など、画面からではわからない効果音の発生タイミングを音響さんに伝えるために、あらかじめ映像に印を付けておくことが「マーキング」だ。また、映像の完成が遅れていて、先に音声を付けなければならないときにも、マーキングをすることがある。その場合、動きがわからず微妙なことも多く、音響さんには嫌がられる。
テレビシリーズなどで毎回登場する決めポーズや変身シーンでは、過去に使った映像カットが使いまわされることが多い。それを「BANK」もしくは「BANKカット」といい、力の入った作画が作られるのだ。似た言葉に「DN」というものがあるが、これはまったく同じ映像を同じ話の中で2度使う場合の用法。もとはネガを複製するという意味だとか。
サウナに入ったときなどに、熱で空間がゆがんでいるように見えたことがある人もいるだろう。そうした“熱さ”をアニメで表現するとき、昔は撮影台に表面がゆがんだガラスを置くことで実際に画面をゆがませていたのだそう。今はコンピューターソフトで再現されるが、その名残で「波ガラス」と言われている。
「音こぼし」といったほうがわかりやすいかもしれない。映像が切れるタイミングに合わせるのではなく、音声を次のカットまでズラして使用することをいう。声優さんが映像にセリフを付けるアフレコ現場では、「次のカットまでこぼしてくださ〜い」などという言葉が飛び交っているとか。
作画するのが手作業である以上、ミスが発生することもある。シーンごとに色指定を行うアニメは、色指定そのものが間違っていたり、色を塗る際に間違えたりして「色バカ」という現象が稀に起きてしまうのだ。また、髪の毛1本など細かい部分を彩色し忘れる「塗り残し」という作画ミスもある。
あまり前面には出てこないが、音響監督は“アニメ収録の要”といわれるほど、アニメーション制作現場で決定権を持つ重要な職業。声優のキャスティング、音楽発注、選曲、ダビングのほか、声優さんに演技指導などをするのもこの人だ。アニメ監督よりも音響監督にかわいがられる声優が売れる・・・というウワサも。