2010年から火がつき始めた日本におけるK-POP人気。しかしこれまでは、“K-POP=アイドル”の印象が強すぎ、K-POP全体の魅力が伝わっているかと言えば・・・決して“そう”とは言えないだろう。Hermin:小さい頃から、両親の影響で、アメリカのオールド・ポップや、クラシックを聴いていたんですね。そういった環境で育ったので、音楽に対する関心は自然と生まれていったのかもしれません。幼稚園に入る頃、実際に鍵盤を弾いてみたいという衝動に駆られて、ピアノをはじめました。それから、教会で賛美歌などの演奏をする機会が出来たりする過程で、クラシックの音楽的構造やメロディの組み立て方などを、小さい頃から聴いていたポップ・ミュージックと相まって、自然と曲が生まれるようになっていったんです。6歳の時に初めて曲を書いたのですが、タイトルは「我が家の時計」という曲でした(笑)。
Hermin:歴史的背景も関係していると思います。日本では早くからジャズが聴かれていましたよね。年をとっても、皆さん幅広いジャンルの音楽を聴いていらっしゃるその環境が羨ましいです。韓国は日本と比べて、欧米の音楽が上陸してからまだ歴史が浅いため、日本のように幅広い世代にまで、様々なジャンルの音楽の魅力が伝わりきっていない部分があると思います。でも、音楽の近代化は着実に進んでいます。ただ、あまりに性急すぎたので、文化として育っていくにはもう少し時間がかかるかもしれません。でも、韓国も豊かになって、音楽を楽しむ余裕も生まれ、それが、ホンデ(弘大)周辺のインディー文化の発展にもつながっていると思います。
Hermin:“経験”を大切にしています。これまでは、自分の恋愛経験や20代の女の子が抱える悩み、日常の出来事を表現することが多かったのですが、今では、恋愛だけではなく、幅広い人々と共感の出来る歌詞・・・例えば人生とか、結婚した女性としての生き方、子供に聴かせたい音楽とか・・・そういった幅広い世界観を表現したいと思っています。メロディは歩いているときに浮かぶことが多いですね。比較的作ろうと思ったら、すぐに作れるタイプです。歌詞は、“詩”のように思い浮かぶその感覚を大切にしています。
Hermin:2009年12月に、目の前にいる古家正亨氏と結婚しました。結婚をきっかけに拠点を日本に移して、音楽活動や以前からやりたかったこと、例えばイラストを描くことやコラムを書くことなど、少しずつではありますが、活動のフィールドを広げています。2011年は古家と一緒にソウルのガイドブックの「ふたりソウル」を出版したり、共同通信社の「もっと知りたい 韓国TVドラマ」では、自分目線で東京での日々を、イラストで表現している連載の「ホミンのTokyo Diary」も連載をはじめて2年になります。韓国では女性は結婚した後は、これまで社会生活に復帰出来ない雰囲気がありました。最近はそれでも随分変わりつつありますが、歌手やアーティストにおいては、結婚して、子供を産んでから、表立って活動しているアーティストは今もほとんどいないといっていいでしょう。女性の歌手は、若くて、綺麗でなければ・・・そういうところだけが重視される傾向があるのは事実です。でも、最近韓国も晩婚化が進んだせいもあって、30代になっても、結婚しても、20代の女の子と変わらない美しさや実力を備える人も多いですし、実際、子育てしながら社会生活を続けている人も増えています。日本の音楽界では、結婚しても、子供を産んでも、活動している人が本当に多いですし、それが特別ではないですよね。こういった環境は羨ましいですね。
Hermin:私が音楽活動を始めた時から、心の中でずっと描いていた夢がありました。それは、20代では、同じ世代と共感出来る歌詞を書いて、その歌を自分で歌うという、シンガーソングライターとして頑張りたいと。でも30代以降には、ドラマや映画、またはアニメの曲を書く作曲家としても活動したいという…夢。とある日、私たち夫婦のマネージャーさんから「佐藤純一監督が新作を準備しているのですが、その音楽を担当しているプロデューサーさんから、私に曲を提供することは可能かどうか?」というお話をいただいたのですが、答えはもちろん「YES!」でした。ずっとやりたかったことでしたもの(笑)。アニメの作曲家として初めて書かせて頂いた曲が、偶然と自分がずっとやりたかった“観ていると心が温まるようなアニメ”だったのでうれしさも2倍でした。「たまゆら」というアニメのサントラに収録されている「夢の兆し」という曲です。機会があればぜひ聴いてみてください。
Hermin:実は今回のシングルは最初から企画して作ったアルバムではありません。CDには6曲が入っているんですが、実際の新曲は2曲で、その内「10年の歳月」という曲は、もう4、5年も前に、メロディだけを完成させておいたものの、その曲の歌詞はつい最近完成させたもので、日本でライブがある度に披露をしていたんですけど、比較的評判が良かったんですね(笑)。そこで、ちょうど2011年に、自分が30歳を迎えることになったので、今までの20代の10年間を振り変える、良いタイミングではないかと思って「発表するなら今だ!」と思って収録しました。もう1曲、「melody」という曲は、少し恥ずかしい話ですが、実はさき程話したアニメ「たまゆら」の曲を頼まれた時に、一番最初に書いた曲がこの「melody」だったんです。が、色んな事情があり、この曲は採用されなかったこともあって、自分のシングルに入れることになりました。もし、私の韓国のサードアルバム「Blossom」をお聴きになっている方は気付いたかもしれませんがこの「melody」はアルバムに収録されている「My little cat」と雰囲気的に似ています。というのも、アニメの音楽プロデューサーさんに「My little cat」のような雰囲気の曲を頼まれた訳です。でも、自分のシングルに入れようと決めた時には、自分が思っている正直な気持ち、感情を込めて歌詞を書き直したので、この曲に対しては凄く愛情を持っています。
Hermin:日本では音源配信はもちろん、12月14日にシングルが発売されましたので、しばらくはそのプロモーション活動をする予定です。今までは、夫の古家と一緒にイベントでライブを披露することが多かったのですが、これからは徐々に、シンガーソングライター“Hermin”ならではのカラーをお見せすることが出来るように、ライブハウスなどで、バンドを組んだりして、自分の音楽世界を皆さんにしっかり伝えていきたいです。音楽以外の活動については...まず、新しい本の出版を控えているのでその作業で忙しくなると思います。語学本なんですが、私は、色んなイラストを描きます。そして、個人的には、今担当している連載の“Tokyo Diary”のような、イラストマンガ本を出すのが来年以降の夢です。私がよく描いている白い犬のPUPUというキャラクターがいるんですけど、その子を生かしてより多くの皆さんに親近感のある作品と発信していきたいですね。