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古家 正亨のK-Musicアーカイブス

Vol.04 ジョン・パク/男性ソロヴォーカル

ラジオDJ/テレビVJ/韓国大衆文化ジャーナリスト
上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。
98年~99年韓国留学。帰国後00年に日本初のK-POP専門番組
「Beats-Of-Korea」(FMノースウェーブ)を立ち上げる。
04年~韓国MTVで日本人としては初となるVJとしてJ-POP番組
「MTV J-BEAT」の進行を担当。
現在、テレビ・ラジオ併せて10本のレギュラーを持ち、日本にK-POPの真の魅力を伝えようと努力している。
韓国観光名誉広報大使、韓国食と農産物広報大使、
2009年には韓国政府よりK-POP普及に貢献したとして、文化体育観光部長官褒章を受章。

http://furuco.petit.cc/
韓国でここ数年ブームになっているものといえばオーディション番組。日本でいう一時期の“ASAYAN(※1)ブーム”と被るものがあるが、その背景にはアメリカで爆発的人気を誇る『アメリカン・アイドル』の存在がある。人種・性別・年齢・職種問わず、誰にでも“スーパースター”になれるチャンスが与えられるというこの番組は、まさに現代の韓国が欲していた“夢”だったのかも知れない。日本以上に厳しい学歴社会を勝ち残ったものだけが勝者とされる韓国。芸能界においてはトップ芸能事務所の練習生を経て“K-POPアイドル”になることが“勝者”とされる中、歌の実力を評価し、スターになれるチャンスが与えられるオーディション番組は、まさにスターを目指す全ての人に与えられた、唯一門戸の開かれた“ステージ”なのかも知れない。
そんな韓国のオーディション番組ブームの先駆けとなったのが、『アメリカン・アイドル』の韓国版といわれる音楽チャンネルMnetの『スーパースターK』。2009年に始まったこの番組だが、何といっても昨年放送されたシーズン2が驚異的な視聴率を記録。ケーブルテレビなどの専門チャンネルでは2%取れれば成功といわれる視聴率だが、このシーズン2では最高視聴率18.1%を記録。国民の誰もがその“コリアン・ドリーム”を手中に収める瞬間を、固唾を飲んで見守った。そして、そんな激闘の末、国民のアイドルと化した優勝のホ・ガク(※2)と最後までそのポジションを争ったジョン・パクにも熱い視線が注がれた。
そして、あれから1年半・・・。ついにジョン・パクが動き出した。今年2月にデビュー・アルバムをリリースし期待に違わぬ大ヒットを韓国で記録。そして、先日Mnetの人気番組『M Countdown』のさいたまスーパーアリーナで行われた公開収録イベント参加のため初来日を果した。今回は、そんな彼、ジョン・パクの魅力に迫っていく。

― 日本で初のステージ、いかがでしたか?

ジョン:まず、自分にとってこれまででいちばん大きなステージでした。約1万5千名の方が会場にいらっしゃったようですね。ですからものすごく緊張しましたが、会場の皆さんがとても温かく僕のステージを見守って、そして応援してくださったので、そんな緊張も忘れさせてくれた・・・そんなステージでした。

― 日本にははじめていらっしゃったんですよね?

ジョン:はい。凄く楽しい時間を過ごさせてもらっています。日本でお会いした方、皆さんとてもやさしくて、いろいろと美味しいモノも食べさせてくれて(笑)。もともと日本食は好きなんですね。寿司、パン、ラーメン・・・本物も食べることが出来ました(笑)。これまでも日本に行ってみたいという気持ちはあったんですが、なかなかチャンスに恵まれず・・・。でも今回短い時間ではありますが、日本に来て、日本のステージに立てて本当に良かったです。分け隔てなく、全ての出演アーティストに最大限の声援をおくる日本のオーディエンスの素晴らしさ。あ、これが日本の公演文化を支えているものなのだと実感できました。正直、はじめて日本に来てステージに立つことは不安で仕方なかったんですね。でも、日本のオーディエンスの皆さんから、ものすごい勇気をいただくことができて、本当に良かったです。

― 『スーパースターK2』出演から1年以上時間をかけてようやくアルバムが発売されましたね。

ジョン:長い時間をかけて制作した作品だったので、作品を手にした時、特別な感じはそれほどなかったんです。確かに自分にとって初めてのアルバムでしたが、でもこの作品は自分にとって、カムバック的な感覚の作品・・・とでもいえばいいでしょうか。またもう一度、多くの人々の前に出て歌うんだという、そのきっかけのような・・・そんな作品という感じがしましたね。

― すでに同期であるホ・ガク、チャン・ジェインといった人たちは一足先にデビューしていたわけですが、焦りはありませんでしたか?

ジョン:最初はありましたね。でも時間が経てば経つほどそういった思いはなくなっていきました。確かに歌手というきっかけを作ってくれたのは『スーパースターK』という番組であることは間違いありません。でも、歌手ジョン・パクを作るのは結局自分自身ですから、音楽制作を、1つ1つ時間をかけて行っていくことで、そういった焦りはむしろいい作品を作る自信につながっていきました。

― 今回発売されたデビュー・アルバムを聴く前に、韓国で先行配信された「I’m Your Man(2011年10月配信)」を聴いた時、この人は韓国のハリー・コニックJr.(※3)になるのかと凄く期待したんですよ。お洒落なジャズ・ヴォーカル曲ですよね? もともとジャズを歌いたいという気持ちはあったのですか?

ジョン:僕はジャズよりもむしろソウルやR&B、それからアコースティックな響きを大切にした曲に関心を持っています。でも、今回アルバム制作を通じて自分の中で大きく変わったところがあるんじゃないかと思うんです。音楽を見つめる視野が広がったというか。ジャンルを定めて何かを作るというよりも、音楽のジャンルを取り払って、取り込めるモノは取り込んでいこうという気持ちになりました。「I`m Your Man」は1つのその形といえるかも知れません。

― そしてリリースされたデビュー・アルバムは、事務所の先輩でもある韓国を代表するシンガーソングライターのキム・ドンリュル。彼が書いた曲も数多く収録されていますが、タイトル曲は、イギリスのシンガーソングライター、Andy Platts(※4)の「Falling」。詞はご自身で書かれていますね?

ジョン:やはり、キム・ドンリュル先輩が書いた曲を歌うというのは、相当なプレッシャーでした。キム・ドンリュル先輩の世界観がすでにでき上がっている中で、自分が先輩の曲を歌うことは、ただキム・ドンリュルというアーティストの曲を、カラオケで歌うことと同じになるのではないかと・・・。でもその辺りは、キム・ドンリュル先輩とじっくり音楽制作を進めていく中で、どうすればジョン・パクの世界にできるかということはアドバイスしていただきましたし、自分なりにそうならないようにかなり気を遣ったつもりです。だからといってタイトル曲に「Falling」を選んだというわけではありません。ジョン・パクの音楽ということを印象づけるために、まだ韓国ではそれほどメジャーではないスタイルの音楽を自分のスタイルで届けたいという思いがあったからです。Andy Plattsの曲は、そんなことを考えていた時に出会いました。直接連絡もさせていただいて、コミュニケーションもとって、どんな世界観で歌を作っていけばいいか、自分で歌詞も書き、プロデュースもさせていただきました。結果、まだまだ不足なところもあると思いますが、ジョン・パクのモダンポップの世界を作り上げることができたと思います。

― 『スーパースターK』というモンスター番組への出演を通じて、様々な経験もし、いろんな事を得たと思いますが・・・。

ジョン:まずは何といっても歌手という夢を実現できたということです。オーディションというのは、短期間でその夢を叶えるチャンスといえます。もちろんそれまでの努力も必要となるわけですが、運もそれ以上に必要になってきます。ですから、自分がそのチャンスを掴んだ、そして自分がこうして芸能界、音楽界に飛び込むことができたということ、それに関して凄く感謝しています。

― アメリカ在住の際には『アメリカン・アイドル』にも参加されていますよね? やっぱり歌手への夢は諦められなかった?

ジョン:中学生の頃から歌に興味を持ち始めて、本格的に歌手ということを意識したのは、高校の最終学年でしょうか。大学でオペラ・クラシックを学びたいと思い、その頃から歌の世界で生きていきたいという思いはありましたね。

― どんな歌手に憧れを?

ジョン:子供の頃は、マイケル・ジャクソン、Boyz Ⅱ Men。高校生の頃は、ジェイソン・ムラーズやジョン・レジェンドに憧れました。特にシンガーソングライターに憧れましたね。音楽は、ジャンルにとらわれず、いろんなものを聴いていました。

― つまりご自身もシンガーソングライターとして活動したいという思いはあるわけですよね? もう作詞の方はすでにされていると思いますが。

ジョン:去年から作詞・作曲の方ははじめています。デビュー作には収録されていませんが、次の作品には自分の曲が多く収録されると思います。

― ところで、所属事務所が[MUSIC FARM]ですよね? 韓国を代表するシンガーソングライターのキム・ドンリュル、イ・ジョク、チョ・ウォンソンといったベテランであり実力派が数多く所属している事務所と契約したわけですが、なぜこういったアーティスティックな事務所と契約することにしたのですか?

ジョン:とても悩みました。でも、自分はもっと“音楽”について学びたいという気持ちがあったので、偉大な先輩達が所属する[MUSIC FARM]という選択肢に、自分が求めているもの全てあると感じたんです。そして自分に対して“責任感”というものを与えてくれる・・・と感じたんですね。そして互いを“信じる”という大切なことを気づかせてくれました。とにかくいろんなことを学ばせてくれると確信して、[MUSIC FARM]でお世話になることにしました。

― これから先、アーティスト“ジョン・パク”の目標は?

ジョン:どこに行ってもこの質問はされます。アメリカに長くいたのでアメリカでの活動は考えているか? とか日本で活動しないのか? とか・・・。でも僕は正直そこまで考えられないんですね。まだ韓国で自分の音楽を知ってもらうためにすべきことがたくさんありますし。まずは韓国の皆さんと自分の音楽でしっかりつながることが大切だと思っています。それができた段階で、たぶん、次は・・・という新しい欲につながっていくと思うんです。でも僕は音楽にとって大切なことは“歌詞”ではないかと思っているんですね。ですから、言葉の問題で、自分の思いをしっかり伝えられなければ自分の音楽に込められた想いを全て伝えられないような気がします。音・メロディーであれば共感できると思うのですが。ですから、日本で活動するということであれば、自分がこれから言葉の面で相当な努力が必要だと思っています。自分の歌に責任を持ってそれを伝えられる・・・その準備がまずは必要ではないか・・・そう思っています。

※1  ASAYAN
95年から02年までテレビ東京で毎週日曜日放送されたリアリティ番組。実は『アメリカン・アイドル』のベースになったという噂もあるオーディション番組で、「夢のオーディションバラエティー」をキャッチプレーズに、小室哲哉やつんく♂、河村隆一などのプロデュースによって、鈴木亜美やモーニング娘。、CHEMISTRYなど数多くのアーティストやタレントを輩出した。また現在少女時代のメンバーとして活躍しているスヨンは、この番組の「日韓ウルトラアイドルデュオ」オーディションで合格し、route0(ルート・ヨン)という名のデュオで、日本先行でデビューし活躍していたことは、よく知られている。
※2  ホ・ガク
『スーパースターK2』の優勝者。A CUBEからデビュー。換気扇の修理工だった彼だったが、歌の実力一つだけで1,340,000分の1という途方もない競争率を勝ち抜き、人生を大逆転させたそのサクセスストーリーは「コリアン・ドリーム」の象徴の1つ。彼の活躍以降、韓国ではオーディション番組が急増した。双子の兄、ホ・ゴンもオーディション番組に出演し話題に。
※3  ハリー・コニックJr.
アメリカ・ニューオーリンズ出身のアメリカを代表するジャズシンガーであり、ピアニスト、そして俳優でもある。日本でも大ヒットした映画『恋人たちの予感』の音楽を手がけ、グラミー賞を受賞し日本でも話題に。一方、そのイケメンぷりが話題となり、俳優としても活躍。これまで『メンフィス・ベル』や『インデペンデンス・デイ』といったハリウッドの大作に出演している。
※4 Andy Platts(アンディ・プラッツ)
“ジャミロクワイmeetsマルーン5!”と言われ、イギリスで大人気のバンドMAMAS GUN。日本のラジオ局でもJ-WAVE中心にヘビーローテーションされ注目されたが、Andy Plattsは、そのMAMAS GUNの中心的人物。シンガーソングライター、デザイナー、マルチインストゥルメンタルを担当する彼を中心としたプロジェクトバンドがMAMAS GUNといっていいだろう。アンディは香港生まれ。フィリピン人の母と英国人の父を持つ。そんな彼がジョン・パクのアルバムに「Falling」という楽曲を提供。日本でもMAMAS GUNファンの間で話題となった。

ジョン・パク

1988年9月13日生まれ。
本名ジョン・アンドリュー・パク。韓国名はパク・ソンギュ。
アメリカのFOXTVの人気番組「アメリカン・アイドル シーズン9」でトップ20まで進出したことがあることでも知られる韓国系アメリカ人。
ノースウエスタン大学で経済学を専攻し、大学内のアカペラグループ「Purple haze」で活動。リードヴォーカルとしてその“声”を磨いてきた。
2010年のMnet「スーパースターK2」に出演し準優勝。
今年2月にデビューミニアルバム『Knock』を発表し、ついにデビュー。

公式サイト MUSIC FARM“JOHN PARK”
http://www.musicfarm.co.kr/artists_john.html
Twitter
http://twitter.com/#!/JohnAndrewPark

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