• ツイート

古家 正亨のK-Musicアーカイブス

Vol.05 KAI/男性ソロヴォーカル

ラジオDJ/テレビVJ/韓国大衆文化ジャーナリスト
上智大学大学院文学研究科新聞学専攻博士前期課程修了。
98年~99年韓国留学。帰国後00年に日本初のK-POP専門番組
「Beats-Of-Korea」(FMノースウェーブ)を立ち上げる。
04年~韓国MTVで日本人としては初となるVJとしてJ-POP番組
「MTV J-BEAT」の進行を担当。
現在、テレビ・ラジオ併せて10本のレギュラーを持ち、日本にK-POPの真の魅力を伝えようと努力している。
韓国観光名誉広報大使、韓国食と農産物広報大使、
2009年には韓国政府よりK-POP普及に貢献したとして、文化体育観光部長官褒章を受章。

http://furuco.petit.cc/
クロスオーバー歌手という言葉をご存じだろうか。声楽をベースにポップスとクラシックを融合させたクラシカル・クロスオーバーを歌う歌手を称する際によく使われる言葉だが、このようなクラシック音楽とポピュラー音楽がクロスオーバーしたサウンドは1990年代にブームが始まっており、その起爆剤となったのが、サラ・ブライトマンとアンドレア・ボチェッリによるデュエット「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」(日本ではCMソングになった)であることはよく知られている。この曲は全世界で2,500万枚以上を売り上げたと言われているが、この勢いに乗って、日本でも故・本田美奈子による「アメイジング・グレイス」のヒットや秋川雅史の「千の風になって」のヒットも、クラシカル・クロスオーバーの人気に拍車をかけたと言えるだろう。その中には、ポッペラというジャンルも存在する。つまりポップスとオペラの融合ということになるが、敷居の高い音楽とみられがちのオペラを、より幅広い人々に聴いてもらえるようにと、ポップスとの融合によって新たな音楽ジャンル“ポッペラ”を作り上げ、クラシックファン以外の顧客層を開拓したとして一時大きな注目を集めた。

一方韓国はどうだろうか。その代表格と言えるのが、チョ・スミだろう。1962年生まれの韓国を代表するソプラノ歌手として知られる彼女。1986年にイタリアでオペラ「リゴレット」のジルダ役でデビューし、その後、ヨーロッパを中心にオペラ歌手として活躍する一方、韓国でも毎年のようにアルバムを発表。CMをはじめ、映画やドラマのサウンドトラック界で、名を馳せ、日本の韓流ドラマファンにも意外と知られた存在である。そんな彼女が、韓国における クラシカル・クロスオーバーというジャンルの開拓者とするならば、今回ご紹介するアーティストは、まさに彼女の志を受け継いだ、新世代クラシカル・クロスオーバー歌手といっていいだろう。男性シンガー“KAI(カイ)”を紹介する。

2002年に「シューベルト・コンペティション」(コンクール)で優勝という実績を誇り、ソウル芸術高校を首席で卒業後、ソウル国立大学声楽科で大学院まで進学し、歌に磨きをかけた彼。その後 先に挙げた、国際的な活躍を見せる、歌手のチョ・スミにその実力が認められ、彼女の全韓ツアーに同行し共演するやいなや観客から大喝采を浴び、一躍注目される存在に。そして、バラード界の貴公子、ソン・シギョンの育ての親として、また日本でも大ヒットした映画「猟奇的な彼女」の主題歌、バラード界の皇帝として知られるシン・スンフンが歌い大ヒットさせた「I BELIEVE」のプロデューサーとしても知られ、最近では人気ボーイズグループ“U-KISS”の韓国での最新シングルのプロデュースを手がけるなど、幅広い音楽ジャンルでプロデュース活動を続けている、韓国を代表する音楽プロデューサー、キム・ヒョンソクが直接プロデュースを受け持った、2009年12月発表の曲「パニッシュメント」で韓国デビュー。その表現力豊かな“歌”力は、まさにドラマの一シーンを観ているようで、ドラマティック・シンガーの異名を持つ。

そんな彼が、日本で2012年5月30日にデビュー。松井五郎作詞で話題となっている先行シングル「愛は深く」でデビューを飾り、8月22日にはついに1stアルバムをリリースする。そんな彼、KAIに、いろいろと話を聞いてみた。

― まずは日本デビュー、そして、アルバムリリース、おめでとうございます。

KAI:ありがとうございます。日本の方はもともと音楽を愛している方が非常に多いと聞いていましたから、心配も少しはありますが、そういった皆さんの住む日本という国で活動出来ることを、とても嬉しく思っていますし、楽しみです。実は、日本と韓国を往来しながら活動すること、コンサートをすることが、夢だったので、自分が奏でるポッペラを今回、このような形で、日本の方に紹介できるようになったこと、凄く感謝しています。

―ところでKAIさんが、音楽活動をはじめるきっかけってなんだったのでしょうか?

KAI:母が音楽教師だったので、自然と日常でクラシック音楽に触れてきたんですね。他の友達とは違った音楽環境に育ったので、クラシックっていいなぁという感情がいつの間にか芽生え、自然とその道に進んでいくべきだという想いが生まれました。小学生の頃からKBS(韓国の公営放送。日本のNHKにあたる)の子供合唱団に入っていたのですが、中学生になると、母がこういったんですね。「音楽の世界は、本人が自分自身で選択すべき世界である・・・」と。つまり母親が「やりなさい」と言ってやる世界ではない・・・と。そんな母の言葉を受けて、中学生になって、音楽そのものから少し遠ざかっていたんです。でも中学校3年生になって、自分の周りに音楽がないことがちょっとつまらないと感じるようになって、母に相談したんですね。やっぱり自分は音楽をやりたいんだ・・・と。そうしたら「あなたが自分で選んだのだから、私は最大限の協力をしてあげる」と言ってくれたんです。そして、ソウル芸術高校という、クラシック音楽を専門的に学べるコースのある高校に進むことにしたんです。

― では、それからデビューに至るまでは、どのような経過をたどっていったのでしょうか?

KAI:芸術高校出身なのですが、クラシックを学んでいると、確かに素晴らしい音楽なんですが、少し窮屈な感じがしたんですね。何百年という歴史を経て、モーツァルト、ベートーベンといった作曲家が生み出してきたこの音楽を、そのまま表現するのではなく、自分だけのスタイルで表現できないかと考えるようになったんです。先に挙げた作曲家たちだって、当時、彼らの音楽は流行曲だったわけですよね? ですから、今自分のスタイルでこういったクラシック音楽を表現してもいいのではないか・・・と考えるようになった訳です。そういった状況の中で、様々な人々から影響を受け、支援を受けて、ポッペラという1つの音楽スタイルに出会うことができ、これで勝負しようと決めたんです。

― それにしても、ポッペラ歌手としては、身長は180センチ以上で、良い体格の持ち主で、一見モデルか?! と思ってしまうKAIさんですが、そんなモムチャン(鍛え上げられた美しい体)にも、実は秘密があるようですね。

KAI:実際、ご存じの通り、オペラ歌手のみなさんは、体格がいいですよね? 僕もかつて100キロ以上の体重だったんです。

― 100キロ以上ですか?

KAI:はい。みなさん驚かれるのですが、23歳ぐらいまででしたね。100キロ以上あったのは。本当に太っていたんです。でも当時は無条件で、声楽家、オペラ歌手は、これぐらいの体型の方がいいという先入観が自分自身の中にあったんですね。で、ある日、鏡を見たんですが、自分が全然魅力的に見えなかったんです。これでは、舞台に立つ時は勿論、普段から自分自身が魅力的とは思えないだろうということを悟ったんです。それからというもの、運動に明け暮れました。結局35キロやせました。約8ヶ月で。

― 8ヶ月で35キロの減量は凄いですね。一体どうやって?

KAI:運動だけですね。ジムに通って、2時間走って、どこに行くのも走る準備をしていって、とにかく運動しましたね。

― 恐れ入ります・・・。さて、ついに日本進出を果したわけですが、今日本ではK-POPのアイドルに注目が集まっていて、正直それ以外のジャンルの音楽となると、固定ファンは存在するものの、なかなか商業的に成功を収めるのは難しい状況です。

KAI:韓流という流行があり、そういった中で、多くの歌手、アイドル達が、そして俳優達が、日本に進出して成功を収めていますよね。でも、僕は、そんな先輩方とは違います。クラシックという最初は取っつきにくい音楽と、ポップスの融合を目指した、KAIだけの色を持ったポッペラ音楽を奏でていきたいと思っていますし、ジャンルを超え、そして、日本・韓国という国の壁を越えて1つになれる芸術として、KAI色の美しい音楽を日本のファンの皆さんと共感し、感じていきたいです。日本の皆さんに今回お会いできるチャンスを得ることが出来、緊張していますが、嬉しいです。クラシック+ポップス=ポッペラという風に区分されるのではなく、KAIという音楽を奏でる音楽家として、日本のみなさんとこれから頻繁にお会いできると嬉しいです。どうかこれからも僕のことを、そして僕の音楽を愛してください!

努力の人という印象を受けた。決して平坦な道ではなく、韓国での音楽活動は苦労の連続だったよう。しかし、韓国を代表する世界的クロスオーバー歌手、チョ・スミと出会い、ツアーに帯同したり、もともと大学でクラシックを専攻した、韓国を代表する音楽プロデューサーのキム・ヒョンソクとの出会いが、彼に大きな力を与えたよう。そんな彼が満を持して日本での活動を本格化させる今、こういった音楽の世界でも韓流の力が吹き荒れることになるか・・・というよりは、クラシカル・クロスオーバーの勢いを再びここ日本で取り戻すことができるかという重要な使命を持っていると言えるだろう。まずは、何の先入観も持たずに彼の音楽を聴いてほしい。

KAI

1981年12月5日生まれ。
182cm、70キロ。
最終学歴はソウル大学大学院声楽科博士課程。
韓国では、クラシックと韓国バラードの融合を目指す“クラード歌手”第1号として知られる。2009年韓国デビュー。Universal Music Classicと契約し、日本でもユニバーサル・ミュージック クラシック&ジャズから2012年春にデビュー。その表現力豊かな”歌”力は、まさにドラマの一シーンを観ているようで、ドラマティック・シンガーの異名を持つ。

ARCHIVE�@�A�[�J�C�u

  • Vol.15 GUMMY�i�R�~�j
  • Vol.14 �L���E�W�m(김진호)
  • Vol.13 �l��(넬)
  • Vol.12 LED APPLE
  • Vol.11 �W�������v(정엽)
  • Vol.10 �C�E�L�`����(이기찬)
  • Vol.09 M.I.B�^KangNam(�J���i��)
  • Vol.08 Standing Egg
  • Vol.07 THE KOXX�^�j�����b�N�o���h
  • Vol.06 (���)IU�^�����\�����H�[�J��
  • Vol.06 (�O��)IU�^�����\�����H�[�J��
  • Vol.05 KAI�^�j���\�����H�[�J��
  • Vol.04 �W�����E�p�N�^�j���\�����H�[�J��
  • Vol.03 CODE-V�^�j�����H�[�J���O���[�v
  • Vol.02 �O�E�e�t��(구태훈)(���J��)�ESOUNDHOLIC��\
  • Vol.01 Hermin�i�z�~���j
©2012 avex