最近、K-POPアイドルを志して、韓国を目指す“日本人”が多いという。嘘のような本当の話で、日本にとどまっているようでは、世界で活躍するのは難しいという判断のよう。しかし、外国人にとって韓国でK-POPアイドルとして活躍するのは、はっきり言ってかなり難しい。K-POPアイドルグループの多国籍化は決して今に始まったことではないが、ただでさえ閉鎖的なお国柄。例えデビューできたとしても、外国人メンバーに対する風当たりは決して弱くはない。それでも韓国を目指す日本人の若者が絶えないのは、やはりK-POPにそれだけの勢いと可能性を感じているからで、確かにここ数年の躍進ぶりには目を見張るものがある。
そんな韓国を目指す日本人にとって、彼らの活躍は、1つの目標となり、参考になるかも知れない。昨年デビューしたばかりのヒップホップグループ“M.I.B”がまさにその主人公である。2011年10月25日に韓国で第1集『Most Incredible Busters(M.I.Bという名前は、この言葉の頭文字をとったもの)』をリリースしデビューした4人組。韓国No.1のヒップホップアーティストである、TigerJ.Kのソロユニット、Drunken Tigerや、その妻で韓国最高の女性ヒップホップ/R&Bアーティストのユン・ミレ、そして、国民的ヒップホップユニットのLeessangを抱える、[ジャングルエンターテイメント]に所属という、そもそものスタートから恵まれた環境を持つ彼らだが、それ以上に注目したいのが、メンバーの1人、カンナム(KangNam)の存在感。実は彼、本名は滑川康男(ナメカワ ヤスオ)、そう日本人なのである。M.I.Bとして活躍する前には、日本でバンド活動も行っていたという彼が、なぜ韓国に渡り、そしてヒップホップグループの一員として、韓国で新しいキャリアをスタートさせることになったのか。今回、彼に独占インタビューを行うことができた。そんな彼の言葉から、韓国で活動することの意味、そしてその可能性を感じてもらいたい。
KangNam(カンナム) :日本人です! 父が日本人、母が韓国人なんです。14歳まで日本に住んでいて、高校はハワイで、大学はアメリカに行っていたんですけど、卒業してすぐに韓国に行きました。
KangNam(カンナム) :もともと日本で活動していて、日本でデビューしていたんですね。ロックバンドをやっていて・・・KCBって言うんですけど、元OrangeRangeのドラムと一緒にやって、ライヴを中心に活動していたんですけど、僕自身のその時の夢が、アジアでトップクラスのアーティストになることだったんですね。その夢を叶えるためには韓国だと思ったんです。最近、韓国の音楽がアジアで評価されているじゃないですか? なので、きっと成功できるヒントが韓国にあるのではないかと思ったんです。そう、思っていた時に、今お世話になっている事務所の社長に偶然出会って、社長がちょうど韓国語、英語、日本語が話せて歌える人材を探していたんですね。で、2週間後には社長から「今すぐ韓国に来い!」という連絡があったんですよ。
KangNam(カンナム) :そうですね。でも、社長とバーに一緒に行ったんですけど、バンドの演奏が聴けるバーに行ったんですね。その時、バーで尾崎豊さんの「I Love you」を歌ったんですよ。この歌は、韓国でもPOSITIONさんにカヴァーされてとても人気のある歌ですよね。そうしたら「お前、これイケルよ」って(笑)。ウソって思いながらも、その事を母に話してみたら「頑張ってみたら」って言うもんですから、その後、デビューまでトントン拍子で進んで行きましたね。
KangNam(カンナム) :僕はグループに一番最後に加入したメンバーだったんですけど、他のメンバーは2年前から事務所の練習生として頑張っていたんですね。ただ、うちの事務所は、アイドル系ではなくアーティスト系の事務所なので、練習生というよりは、放置主義と言えばいいのかなぁ・・・とにかく自分たちが進んで何かに取り組まなくては何も進まない・・・そんな環境だったんです。なので、1年ぐらいは悩みましたね。どうしよう、何をしようって。でも、ようやく1年ぐらいたって「よし、やってみよう」って曲作りを始めて・・・。
KangNam(カンナム) :意外かもしれませんが、日本とそんなに変わらないかなって。僕が韓国に行って、テレビに出演したりして思ったのが、たくさんの音楽番組に出演したところで、出演する意味はあっても、有名になれる訳ではないということです。一度にたくさんのアーティストが出てくるし、週に4つ、5つそういった音楽番組があるじゃないですか。ですから、観ている人も当然すべてのグループを覚えてくれる訳ではないですよね。なので、競争がとにかく激しいです。他のグループと少しでも違ったところを見せないと、目につかないので、みんな必死ですよ。なので、そういう部分で日本よりも韓国の方が競争が激しいと感じたんですね。
KangNam(カンナム) :そうです、そうなんです。なので、うちの社長はスゴい!
(2人爆笑)
KangNam(カンナム) :すごい僕たちテレビに出演させてもらって、僕は個人的にバラエティにも出させてもらってますし、本当に社長には感謝しています。
KangNam(カンナム) : 8ヶ月ぐらいですね、本格的に動き始めてからは(インタビュー時:今年7月)。少しずつ僕らも知られるようになってきたかなぁと思うんですけど、まだまだ自分たちの音楽スタイルというものを模索していかなくてはならないと感じていて・・・。ヒップホップってご存知の通り、韓国ではまだ遠い目で観られる傾向があるので・・・。
KangNam(カンナム) :そうです。なので、僕らもどうすれば、もう少し多くの人に近づけるかを考えながら曲を作っていますね。
KangNam(カンナム) :他の3人のメンバーにも意見をきかなくてはならないと思うんですが、大人から子供まで、守備範囲の広い、サザンオールスターズのような存在ですね、個人的に考えているのは。ヒップホップという音楽ジャンルではあるけれど「この子たちを観ていると楽しくなるよね」とか「テンションの低い時にもアゲてくれるよね」「嬉しくなるよね」とか、そんないろんな人に愛されるアーティストになりたいですね。実際、僕らの事務所の先輩(Leessang、Drunken Tiger、ユン・ミレ)はそういう存在ですから。そんな先輩たちを超える存在にならなくてはと僕らも思っていますし、社長にもそうハッパかけられています。なぜかというと、韓国でヒップホップと言えば・・・Drunken Tiger、ユン・ミレ! って言われるくらい、スゴい2人じゃないですか。だからこそ、超えなくては・・・って考えながら頑張っています。
KangNam(カンナム) :確かに他の3人のメンバーとは違う感じですね。僕は日本に住んでいたので。正直、不安なところがたくさんあります。僕の知り合いも僕のステージを観るでしょうし。日本人としての心も十分理解しているので、どうやってM.I.Bのステージを作り上げれば、日本でも受け入れられるかって言う事を、必然的に考えてしまいますよね。以前思ったのが、僕が日本語を話すと、面白く感じてもらえないのではないかって・・・。僕は黙っていて、むしろ他の3人にしゃべらせた方が受けるんじゃないのかって・・・。
KangNam(カンナム) :そう。でも、この前大阪でイベントの参加した時に「もう、いいや」って感じで、僕が日本語で全部MCをやったんですよ。そしたら、みんな喜んでくれて。テンションあがって、本名がヤスオっていうんですけど、「ヤスオです!」って言ったら、みんなそれから「ヤスオ!ヤスオ!」って言ってくれました。社長に言い過ぎだって怒られましたけど・・・。
KangNam(カンナム) :本当にスゴい時代になりましたよね。実は、僕が生まれ育った環境のせいもあって、何か自分も、何かの形で日韓の距離を縮められるようなことをしたいっていう気持ちがあったんです。だから、今こうして、自分が音楽を通じて橋渡しできているということがスゴく嬉しいんですね。なので、もっとそんな役割を果たせたらと思っています。