沖縄民謡には、多岐に亘る歌があります。教訓歌、わらべ歌、踊り歌など様々です。その中で、戦後、その時々の世相を背景に、沖縄の人々に愛され、民謡というよりは流行歌としてラジオから流れ、また民謡酒場でも長く愛され来た歌が、本CDに収録された「ユーモアソング」とも呼ぶべき、ユニークな沖縄民謡です。「あーあ 男の人は脇骨がひとつ足りない」と歌われる「ソーキ骨不足」とは、女性にだらしない人に対して沖縄では、「ソーキ骨不足」と言って揶揄します。男というものは、火傷をして初めて分別を得る生き物だ、ソーキ骨=脇骨がひとつ足りない生き物だ、ということを、コーラスパートで女性陣が皮肉を込めて歌い上げます。その明るい曲調と歌詞には、思わずニャッとしてしまいます。また、ククラキ節では、「好きな彼氏のためには、何から何まで捧げます。嫌いな男との付き合いは、取るだけ取ってバイバイさ」と歌われています。沖縄方言のククラキ=胸やけ、の言葉を織り込み、ユニークな歌詞に仕上げています。今回のアルバムに収録された23曲は、いずれも、ちょっとクセがある、ユニークな人物を描写したり、またその時々の世相が背景になっています。それらがユーモラスに活写された歌詞には、思わず笑みが漏れると共に、沖縄ならではの生活や風習がそこから見えて来ます。人生、いつも真ん中を歩けるとは限らない。時には、道を逸れてもいいじゃないか、のんびり行こうよと、という大らかさを感じる歌の数々。そして、それこそが沖縄ならではの「ユーモアソング」なのです。
なお本作は、プロデューサーである野原廣信の、「最近ではあまり歌われなくなった、昔のおもしろい歌を掘り起こしたい。戦後の苦しい時代、沖縄の素晴らしい唄者たちがおもしろい歌を作り、その歌が、人々に笑顔を与えました。それらの歌は、きっと現代にも通じる筈です」との思いからスタートしました。
なお、CD1には、ボーナストラックとして、アメリカのオハイオ沖縄友の会メンバーの作詞による「コロナ節」を収録しました。
また、CD2の「ソーシャルディスタンス小唄」は、この時節ならではのユニークな歌といえます。