2020年9月に発売された、與那覇有羽のアルバム「風の吹く島〜どぅなん、与那国のうた〜」に収録されている、与那国のわらべうたメドレー。
その歌詞には、深く心を動かされるものがをありました。特に「ニチヌサンアイティ」(本作では24曲目に収録)で歌われる「縦糸も横糸も足りないから 雨を降らさないでね お願いお願い」「天主様の命令だから 生きることも死ぬこともできません だから雨を降らさないでね」、と歌われる歌詞には、深い悲しみを感じました。このわらべうたは、耳に心地よく響きますが、歌詞には、人頭税(にんとうぜい)時代の過酷な生活が描写されています。過大な税金の支払いを逃れるため、人減らしをせざる得ない、悲痛な現実。課せられた税金の支払いのため、夜明けから、日の入りまで、働きずめのお父さん、お母さん。畑仕事が、はかどるように、どうか雨だけは降らさないでね、と両親不在の家で唄う、幼い子どもたち。無垢な子どもたちが、このようなうたを歌わなければならなかった現実を考えた時、言葉を失います。
本来、日本のわらべうたとは、『わらべうた 日本の伝承童謡』(町田嘉章・浅野健二編)によると、子どもの遊びのためのうた=遊戯うたが中心を占め「遊戯を面白く連続せしめるための韻律的運動が主眼であるため、必ずしも歌詞内容には重きを置かない」と記載されています。「ニチヌサンアイティ」は、そのように一般的に規定されるわらべうたとは、全く違う内容のものです。
また、今回のアルバムに収録された「マイナルハトゥテイ」では、「前になったものは後ろにさがれ 後ろになったものは前になれ」と歌われています。 一時の順位を競うのではなく、お互いが譲り合う大切さを歌った、とても素敵なわらべうたです。
与那国のわらべうたに関心を持った私は、與那覇有羽、いずみの兄妹に、現存する与那国のわらべうたについて聞いた所、その数は約30曲以上あるとのこと。ならば、是非、そのうたを録音したいと申し出、形になったのが本アルバムです。