■ウチナー・ジャズについて
第二次世界大戦後、沖縄を統治下に収めたアメリカは、基地内外でさまざまな娯楽行事を実施しました。その一つがジャズコンサートであり、カウント・ベーシー、ルイ・アームストロング、ライオネル・ハンプトンなど大物ミュージシャンが沖縄に来ました。また、フィリピンからも多数のジャズ・ミュージシャンを呼び、コンサートを行いました。本作のレコーディングでテナー・サックスを演奏しているアラン・カヒーぺも、フィリピンから1951年に沖縄を訪れ、以降も帰国することなく、現在に至ります。
沖縄ジャズの歴史は、終戦の年(1945年)、アメリカ軍が地元の芸能人を集め、琉球芸能連盟を結成させたことから始まります。1947年12月には、正式にプロのバンドとして「南の星バンド」が登録され、嘉手納のグリフィン劇場(野外)のステージを踏んでいます。(当時の出演料は、ラッキー・ストライク2ケース)
その後、1950年代に入るとジャズは隆盛を極め、基地内のクラブは増え続け(最盛期で36ヶ所)、さらに多くのジャズミュージシャンが必要とされました。そこでアメリカ軍と時の政府は、地元でのジャズミュージシャンの育成に乗り出し、中学、高校で吹奏楽部に所属していた者たちがその要望に応えました。最初はジャズ独特のグルーブやノリが解らなかった為、カカシ(楽器を演奏している振りをして立っているだけ)としてステージに立ちました。そんなジャズビギナーも、基地で手に入れたレコードや、アメリカ、フィリピン、そして東京から来るミュージシャンの演奏に接するにつれ、徐々に実力を付けて行きました。
当時、ジャズミュージシャンは花形でした。給料が公務員の2〜3倍あったからです。1950年代から(特に1952年から1955年に掛けてミュージシャンの数は増えて行き、1958〜59年には15のビッグ・バンドがありました。)60年代は沖縄中でジャズが聞かれ、ミュージシャンは夜10時頃に基地内での演奏が終わると、今度は基地の外のキャバレーで演奏を続けました。まさに沖縄ジャズの黄金時代であり、アメリカ人のみならず沖縄の人々にとっても、ジャズは特別な音楽ではなく、大変身近なものとして広く愛されていました。1972年の日本復帰以降は、予算の削減から基地内のグラブ景気は衰退の一途をたどり、ミュージシャンの解雇も相次ぎました。その後、ホテルのラウンジなど民間の施設に演奏の場は移り、1980年以降は、ピアニストの屋良文雄の活躍もあり、ジャズイベントが定期的に行われ、またジャズを中心に演奏するライブハウス(「寓話」「インタリュード」など)も活況を呈する様になりました。現在、ベテランから若手ジャズミュージシャンの活躍もあり、ウチナージャズの火は消える事なく、熱く燃えています。
■本作について
2008年リリースのアルバム「ウチナーJAZZ!」は、ベテランミュージシャンを主役に、若手と中堅を交えて制作されたアルバムでした。そして今作は、真栄里英樹を中心にした中堅が主役を担うアルバムとなりました。ウチナージャズの原点である、ビッグバンドスタイルは変わることは無く継承され、そこに今年(2022年)92歳となるアラン・カヒーぺ参加のカルテットや、ドラマーの上原昌栄(86歳)、長きに渡りウチナージャズを牽引してきたテリー重田(81歳)、そして故屋良文雄氏の息子の屋良朝秋のカルテット、さらに情感溢れる歌声が素晴らしい安富祖貴子が参加しています。
収録曲はオリジナルから、沖縄民謡、1969年4月NHK「みんなのうた」で放送され話題となった「えんどうの花」、慰霊の日には欠かせない名曲「月桃」、そしてジャズのスタンダードまで、ウチナージャズならではのオリジナルティー溢れる選曲です。ジャズのジャズたるスピリットが今も息づく、ウチナージャズの魅力溢れる1枚です。
■アルバムプロデューサー、真栄里英樹プロフィール
沖縄県那覇市首里出身。
東京コンセルヴァトアール尚美卒業。 東京でのフリーランス活動後、帰沖。現在はトロンボーン奏者 として「ディアマンテス」「津嘉山正明 & スパイス」などのバンドに在籍。また沖縄県内外のアーティストのサポートやレコー ディングに多数参加している。近年では作編曲へも力を入れ2008年 CD「ウチナーJAZZ!」へ アレンジを提供。2011年には作曲家、普久原恒勇氏の「作曲活動50周年コンサート」にて全編オーケストラの編曲と指揮を担当する。2017年琉球新報の コラム「落ち穂」へ半年間寄稿するなど活動は多岐に渡る。2012年沖縄ジャズ協会副理事長、2016年同協会事務局長。ジュニアジャズオーケストラおきなわ那覇ウェスト講師。2016年「真栄里英樹 BIG BAND」を立ち上げ、イベントやライブにて好評を博している。
■真栄里英樹、ウチナージャズへの思い。
僕が音楽に後ろ向きだった時、一緒に演奏していた先輩ミュージシャンから「なとーんどー(できているよ)」という島言葉(沖縄語)で救われました。決して良い演奏ではなかったのに、先輩はそう言いました。沖縄のジャズメンはとてもおおらかです。表向きは怖くてもそれは家族のように思っているから。愛があります。これは沖縄という島が19世紀まで琉球王国という国家で、その後の大戦、そしてアメリカ統治と激動の道を歩んだことで育まれた郷土愛や、一族に対する連帯意識からなるものでしょう。音楽はその土地土地の文化を大きく反映します。僕が帰郷して出会った沖縄のジャズは庶民からも愛され、カチャーシーと混ざってジャズが演奏されていました。ジャズはアメリカで生まれた音楽ですが、地元に根付いたジャズは沖縄に溶け込んでいて、すでにウチナージャズでした。これは出来上がった一つの音楽文化です。このスピリットはずっと大切にしてゆきたいです。
■演奏 真栄里英樹 BIG BAND(17名編成:5sax、4tb、4tp、pf、gt、bass、dr)1.2.3.4.5.12.13.14
屋良朝秋、寓話カルテット(pf:屋良朝秋、a.sax:Bun岩崎、bass:比嘉辰雄、dr:津嘉山善栄)9.
テリー重田カルテット(t.sax:テリー重田、pf:玉栄政昭、bass:西川勲、dr:津嘉山善栄)8.10
JIJI324(t.sax:アラン・カヒーぺ、pf:宮里政雄、bass:西川勲、dr:金城吉雄) 6.11 ※324とは4人の年齢の合計
アラン・カヒーぺ&宮里政雄 15.
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■商品番号:RES-339
■発売日:2022年6月22日
■ALBUM / CD
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