中村 中 LIVE 〜愛されたくて生まれた〜インタビュー
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INTERVIEW
 
――すごく生々しくて濃密なアルバムになりましたね。
中村 中(以下、中): 前作から比べると、すごくリラックスした気持ちで作ることができました。川からゴツゴツした石が流れてきて、それが少し研磨されてきたような感じというか。すごく理想に近いアルバムができたと思います。
――制作に入る上で、どのような作品を目指そうと思いましたか?
中:今回はもう少し心の奥底にある気持ちを素直に出してあげたいというか、ナチュラルな自分を出してあげたいなと思ったんですよ。あの……夜のアルバムを作ったんですね。昼間って、人とお話ししたり仕事をしたりする上で、ある一定のルールをもとに動いているじゃないですか。でも、そういうものを取り払って、すごく寂しい気持ちを思い出したり、すごく悔しい気持ちを思い出したりする時間も絶対に必要で。そうやって、一日で感じたいろんな感情を清算してリセットする、大切な時間が夜だと思うんですよね。このアルバムは、そういう時間に思うことのみを描いたアルバムなんです。
――その一方で、すごく緻密なストーリー性も感じました。
中:今回はシングルで発売した「リンゴ売り」と「裸電球」が基盤になっていて。「リンゴ売り」から始まって「裸電球」で終わるアルバムを作ろうと決めていたんです。(アルバム・タイトルの)“私を抱いて下さい”という言葉は「リンゴ売り」から取ったんですけど、「リンゴ売り」の中で歌われる“私を抱いて下さい”は、すごい投げやりなものなんですね。“誰でもいいから私を抱いて”みたいな。でも、「裸電球」で歌われる“私をどうか抱いてくれないか”という台詞は、「リンゴ売り」のものとは違って真摯な言葉で。相手に求めてばかりで孤独だった人間が、独りで夜をさまよって泣いたりする中で、だんだんと浄化されて“自分が抱いてあげたいよ”と言えるようになっていく……そのさまを、うまく描けたような気がするんですよね。
――(HPなどに記載されている)プロフィールを見ても、“歌う事以外にほとんど興味を示さなかった”と書かれていますが、歌に対する思いは昔から強かったんですか?
中村 中 中:小さい頃から歌は好きだったんですけど、曲を書き始めたきっかけは、もう少し歌とは違うところにあって。“私は今生きているんだ”って、自分で自分を納得させるために曲を書き始めたんですね。何もないと納得できなくて、自分で納得できるわかりやすい何かが欲しかったから、“よし、私には歌が書ける。だからこうやって生きていこう”って。生きる理由として歌を使っちゃったんですよ。だからもしかすると、私がソングライトする理由って、すごく不純かもしれないです。今だから言えますけど……歌以外には何もなかったですからね。だいぶ歌に頼って生きていました。
――逆に、“注目されたい”とか“スポットを浴びたい”という思いはありましたか?
中:まったく(笑)。というのも私、裏方が好きで、作家になりたかったんですよ。歌は好きだけど、プロにはなれないと思っていたし、“自分は歌う人間ではないんじゃないかな?”って、常に疑問でもあったし。だから……すごく難しかったです、その辺の折り合いは。
――その気持ちが変化してきたのは、いつ頃からですか?
中:今でも不安ですよ。むしろ、デビューしてからの方が特にそう思ってます。でも今一番確かなのは、歌っているときこそ生きているんだな、歌ってないと私は死んじゃうんだなっていうことで。そこで初めて気付いたんですよ。“あ、私は間違えたんだ。歌と人生をくっつけたからいけないんだ”って。本当は生きる理由を歌に頼らないで自分で見つけなきゃいけなかったのに、歌に手伝ってもらったりしたから、歌から離れられなくなっちゃったんです。でも、だからこそ歌っているときは本当に生きているんだって実感できるし、ステージの上にいるとフワッとするんですね。地上を歩いているのが窮屈で仕方ないんですけど(笑)、歌っていると空を飛んでいるような気持ちになるんですよ、気持ちよくて。だから最近は、“こんなにステキに歌える状況があるんだから、もう余計なこと考えないで歌いなさい”って(自分に)言い聞かせています。
――だからだと思うのですが、すごく切なくて自虐的なことを歌っている歌でも、中さんの歌声自体はとても力強くて。すごくポジティヴに聞けちゃうんですよ。
中: ありがとうございます。聴き終わったとき、なんか温まってたらいいなと思うので。
――メロディもしっかりしていて。ただ独りよがりな感情を吐き出しているだけの音楽ではなく、ポップミュージックとしても完成度の高いものになっていると思いました。
中:確かに伝わりやすいもの、誰でも口ずさめるようなスタンダードなものを作るようには心がけています。前作より、歌謡性も強まったと思いますし。もともと私の音楽を聴いてくれている歌謡曲好きな世代の人たちにも喜んでもらえて、初めて聴く人にも、“中村 中”っていう存在をわかってもらえるアルバムになったのかなって思っています。
――アルバムを2枚重ねて、自分自身の立ち位置やポリシーのようなものに変化はありますか?
中:痛かったものをキレイに飾り立てて歌わない、ウソはつかない、そういうところは固まってきましたね。でもまだまだ未熟だし、わかんないことだらけで。ずっと何かに追いかけられているような気持ちなんですよ。自分の夢がすごく大きくなっちゃって、自分自身のキャパを超えちゃうみたいな。だから毎日必死ですね、自分の理想みたいなものに自分が潰されないように。
――最後に、現在実施中(取材時)のツアーについて教えてください。
中:今回は“愛されたくて生まれた”という副題をつけたんですけど、内容としては、前半は舞台みたいで後半はライヴみたいな、そういう区切りをつけました。初めての試みとしてSEを使ってみたり、いろいろ序盤から驚かせようと思っています。あと、毎回アンコールでグッズ紹介のコントをやっているんですけど、今回は台本も作って振り付けも考えて、それ用の音とかも自分で作ってやっているんで、ぜひそこも楽しんでもらいたいですね。で、帰りにグッズを買っていただけたらうれしいなあ。もちろんライヴで買い逃しても、mu-moショップがあるので(笑)。
(Text:齋藤 美穂)

 
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