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伊藤洋介(東京プリン)&中塚武『TOKYO SOUNDSCAPE』インタヴュー
これ、ほんっとに手前味噌だけど、奇跡なんだよね。
RELEASE
   
CD  
今年デビュー10周年を迎えた東京プリンが送る、新たな試みの一枚。今の「東京」を
感じさせる音をテーマに、クラブ系トラックメーカーが曲を、広告業界のクリエイタ
ー達が歌詞を書き下ろした豪華コラボレーションによるアルバムだ。

■2007/11/7 発売
■\2,205(税込)
■CD
INTERVIEW
   
10周年を迎えた東京プリンのニュー・アルバムは、いつもと違うスペシャルな一枚! 今をときめくクラブ系トラックメーカー達が作曲を、そして広告業界のクリエイター達が作詞を手がけた豪華コラボレーションによる6曲+リミックスを収録。ずばり“東京”をテーマに据えた、お洒落でハイセンスなアルバムだ。その制作の裏側を、伊藤洋介と作曲に参加した中塚武の二人に語ってもらった。
――アルバムは予想以上に本気の作品、しかも今までにないテイストのものですよね。
伊藤: このアルバムは、今までと全く違う新しい試みをやろうということだったんでね。僕らが曲も歌詞も作ってないんで、当然、テイストは全然違いますね。
――東京プリンの10周年にあたって、これまでとまったく違うテイストのアルバムを作ろうというアイディアは、まずどういうところから生まれてきたんですか?
伊藤:僕は野球が好きで、去年と今年に、プライベートでNYにヤンキース対レッドソックスの試合を観に行ったんです。で、向こうの人たちといろいろ話した時に……NYの人って、NYに住んでいることをメチャクチャ誇りに思っているんですよ。“I LOVE NY”っていうTシャツを作ったり。その時に“なんで日本人って日本のことを誇りに思ってないの?”って思ったんです。もっと言っちゃうと、東京の街って、アメリカの人たちからもすごく注目されているのに、東京の人で、“東京が大好きなんだ!”って、声を大にして言うような人ってあんまりいないよねって話になったんですよ。で、考えてみると、僕らは「東京プリン」じゃないですか。“東京”ってついているんだから、“東京を音で表したらこうなりますよ”っていうようなものを、何か作ってみたいなと思ったんですね。
――なるほど。
伊藤:でも、もう44歳なので、今、若い人たちに東京の中でどういう音が受け入れられてて、どういう音が東京を象徴するような音なのか?っていうのが、いかんせんわからない(笑)。だから、エイベックスのスタッフに“とにかく東京を音で表現している人たちを、6人連れてきてください”って頼んで。で、せっかくだから、歌詞も僕の友達であるCMの業界のクリエイターの連中に頼もうと思って。CMの業界の人っていうのは、常に15秒とか30秒とかで勝負しているんで、ものすごく言葉を大事にする人たちで。彼らの力を借りたら、一体どうなるかな?っていう実験をやってみようと思って。それで、このアルバムが出来たんですよね。
もうひとつ言うと、本当は俺たちが歌うつもりだったんですよ。で伊藤洋介も、曲が出来上がった時に、あまりにもよかったんで“俺たちが歌っちゃ駄目だ”と思って(笑)。俺たちが歌うよりも、違う女性のボーカリストに歌ってもらった方がいいような気がして。別にプロデューサーじゃないんだけど、まあ、東京プリンっていう“みんなが遊んでくれる場”を提供することも、やり方としてはちょっと面白いと思ってね。
――中塚さんは、東京プリンのアルバムに曲を提供する話にあたって、どういうイメージの曲を作ろうと思いました?
中塚:トラックメーカーのメンバーは知っている人ばっかりだったんで“コイツらが作らなさそうなのを、絶対作ろう”って思いましたね(笑)。かぶっちゃったら面白くないし。6曲並べた中で、いちばん異色になれば良いなあって思ってました。でも、他の曲を聴いたら、みんな結構バラバラで(笑)。
――実際に曲が来た段階での、伊藤さんの感想は?
伊藤:あのね、実はすごく面白い試みをしていて。6人の作詞陣には曲も何にも聴かせず、全員に“東京をイメージして、ポエムを作ってください”っていう宿題を出したんですね。だから、彼らは、どんな曲がくるのかもわからないわけ。で、中塚くんをはじめいろんな方が作ってくれた曲に、“この曲には、この歌詞がいいんじゃない?”っていうのを、僕があてはめていったんです。これがもう、奇跡的にハマったんですよ。(風とロックの)箭内が最後に「No No Pudding, No No Tokyo」の歌詞を、締め切り守らずに持ってきたんだけど(笑)、その時にはもう安田(寿之)くんの楽曲が出来上がっていて。“これに合わなかったら、ちょっとヤバイな”と思ってたんだけど、これがマッチしたんですよね。これ、本当に奇跡ですよ。
――曲を作る側も、歌詞を書く側も、お互いのことを全然知らなかったわけなんですね。
伊藤:全然知らないよ。どんな、メロディがのるかも知らないから。でもね、それもすごくドキドキして面白かった。で、最後は、本当にちょっとホッとしたっていうか(笑)。
――中塚さんの方は“東京”をテーマに曲作りしようというイメージはあったんですか?
中塚: いやいや。それはまったくないです。
――でも、サウンドの方も“今の東京”っていう雰囲気を非常に表してますよね。言葉とメロディだけじゃなくて、全体的なテイストがぴったりハマっている感じがします。
伊藤:そうだね。これ、ほんっとに手前味噌だけど、奇跡なんだよね。

中塚:よく合いましたよね。

伊藤:よく合ったと思うでしょ?本当にそうなの。中塚くんが作ってくれたトラックも、やっぱり「T.T」の書いた歌詞しかあてはまんなかったし。彼も、自分の詩とメロディがぴったりとハマったことにすごい喜びを感じてましたね。
中塚武――中塚さんは、自分の曲に詩と歌が乗ったのを聴いて、どんな印象でした?
中塚:びっくりしましたよ。歌声にも、詩にも、ちょっと“触ると危ない”みたいな感じがあって。なんて言ったらいいのかなあ……単にハッピーじゃないっていうか。それがすごい嬉しくて。ざらついてて、尖がってるっていうのがすごい嬉しくて。“ああ、こうきたかぁ”って思いましたね。
――こうして『TOKYO SOUNDSCAPES』のタイトルどおり、今の東京を音と言葉で描写しようという試みが奇跡的に実現した、と。そこでの手応えは大きかったんじゃないですか?
伊藤:それは、もうすごく大きい!爆音で何回も聴いたんだけど、何回聴いても良くて。いつもはね、僕らふたりでやってると、“これをみんながどう思うか?”とか“枚数売れるかな?”とか比較的考えちゃうんだけど……これに関しては、失礼な話かもしれないんだけど(笑)、あんまり考えてなくて。みんなが集まってくれて、それぞれの持ち場で、ベストパフォーマンスを出してくれて。出来上がって、何度聴いてもいいから。“これはよかったなぁ!”って思いますね。
――今回は、“ひねり”とか“皮肉”とか、笑いをとりにいくとか、そういう要素は一切ないですよね。
伊藤:ないね。ほとんどない。
――これをやったことによって、東京プリンというユニットの可能性がものすごく広がったのでは?
中塚:チーム競技みたいになったのかもしれないですね。今まで、柔道やボクシングみたいに、ピンの競技だったものが、チームになってやった感じ。それなりに団結力があるし。また、お互いがお互いを知らないっていうのがいいですよね。みんな、自分のことばっか考えてて。集まって。で、結果、チーム競技になってるっていう。
――では、最後に。アルバムの聴きどころを改めて一言ずつ、どうぞ。
伊藤: もう、すっごい自信作なので、聴いてください。絶対いいから!

中塚:最初から最後まで聴いて欲しい感じです。曲順が素晴らしいし、流れがあるんで。そうすると、すごく楽しめると思います。
(Text:柴那典)