【定額制音楽配信って何?】
AWAのプレイリスト文化が面白い!
ついに定額制音楽配信としてApple Musicが日本でもはじまりました。これでAWA、LINE MUSICなどとともに役者が揃ってきた感があります。とはいえ「サザンやミスチル、バンプなど人気アーティストの曲が無いよね?」、「そもそも無料で聴き放題ってどういうこと?」、「目の前に曲をたくさん用意されてもどう楽しんで良いかわからないよ?」なんて声も聴こえてくることでしょう。
Apple Music、AWA、LINE MUSICはスタートから約3ヶ月間は無料ですが、その後は月額数百円から千円前後を払えば、音楽が聴き放題になるサービスです。再生回数によって権利者に楽曲使用料が分配されます。いわば、音楽リスナーは“購入して所有する文化”から→“聴く文化”への変化が起きました。テクノロジーの進化によって、“購入して所有する”といった中間行動が無くなったわけです。その結果、人はたくさんの音楽に触れられる環境を得ました。しかし、冒頭でもふれたように時代に応じた“音楽の楽しみ方を再定義”しなければ、定額制音楽配信の未来は明るくないと思っています。
それぞれのサービスのメリットを簡単にいいますと、Apple Musicは、定額制として用意された楽曲とともに、これまで自分がCDからリッピングした(読み込んだ)楽曲や、iTunesストアで購入した楽曲をいっしょに楽しめます。LINE MUSICは、LINEスタンプで挨拶(コミュニケーション)するように、楽曲を気分に合わせて友人にシェアできることができます。ともに、新譜も旧譜もたくさんの楽曲リストの中から聴き放題なのは3サービスともに同じです。
そんななか、21世紀らしい音楽サービスとして革新的だなと思ったのはAWAでした。
AWA オフィシャルサイト
その理由のひとつは、リスナーの気分や趣味志向を反映したプレイリストの公開を8曲に絞ったことです。さらに、スマホで感覚的に使える選曲ツールによる手軽な選曲体験を提供し、SNS上へシェアするという楽しみ方を、もっともスムーズに提案できているところです。そこには、かつてカセットテープやMDにお好み楽曲をダビングしてプレゼントした文化の、テクノロジーによる再定義といった考え方が明確にあらわれています。
もちろんこれまでも、新譜も旧譜もたくさんの楽曲リストの中から聴く、プレイリストを作る、試聴URLをシェアするという行為は、iTunesでもYouTubeでも出来たことですが、スマホでプレイリストを感覚的に作りやすく、そこに8曲しばりという制限を与えることでゲーム性を与え、シェアしたくなる設計を実現されたことに可能性を感じています。
かつて音楽業界にイノベーションが起きた時、振り返ってみるとカラオケやDJ文化など、“選曲”をおもちゃ感覚にゲーム化したサービスが世の中を変えていきました。
AWAは、プレイリストの公開をあえて8曲に制限したことで、音楽リスナーのプレイリスト制作の楽しさをゲーム化しているのです。さらに、インスタグラムのように、自分の好みやセンスを表現できる場としても機能しています。そのことは、スマホ時代の音楽文化にふさわしい進化を感じさせてくれたのでした。
筆者の使い方としては、寝る前や帰宅中の電車での数分間、翌日の移動中に聴きたいプレイリストを8曲セレクトして公開すること。今後は、夏の旅行BGMなど使用機会も増えることでしょう。目的を考えて、選曲することはワクワク感を与えてくれます。もちろん、時間が無いときは友人や大沢伸一さん(←センスずば抜けた最高のプレイリストばかり!)が日々更新しているプレイリストを楽しんでいます。
今後、Apple Musicの進化はもちろん、SpotifyやGoogleなど海外大手の定額制音楽配信サービスが日本へやってくることでしょう。しかし、“プレイリスト制作の楽しさをゲーム化するという視点”をさらに突き進めることができるのであれば、日本発のAWAは、世界の並み居る競合のなか、定額制音楽配信のひとつの在り方として価値を提供できるかもしれません。
そして、定額制音楽配信を通じてハマったアーティストと出会えたら、CDやグッズをmu-moで探してみたり、ハイレゾやアナログ文化へ手を伸ばしてみたり、コンサートに足を運ばれてみてはいかがでしょうか? 人類の歴史において、これほどたくさんの音楽に触れられる時代はかつてありませんでした。そんな時代に僕らは生きているのです。
mu-moショップ
<ふくりゅう AWA オススメ・プレイリスト>
次回は7月10日更新
ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
Yahoo!ニュース、J-WAVE、MTV81、ミュージック・マガジン、2.5D、音楽主義などで、書いたり喋ったり考えたり。……WEBサービスのスタートアップ、アーティストのプロデュースやプランニングなども手掛ける。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)、DREAMS COME TRUEツアーパンフレットへの寄稿、TM NETWORKツアーパンフレット・シリーズ執筆。SMAPタブロイド新聞フライヤー執筆。メイン取材&100曲解説を担当した『小室哲哉ぴあ TM編&TK編』、4万字取材を担当した『氷室京介ぴあ』(ぴあ)発売中!
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