第3回|「12」をつくるときの
プロダクト管理担当の頭の中

commmonsのプロダクト制作進行を担当しています。
今作『12』では南 琢也さんにパッケージ、WEB、グッズ、リーフレットなどのデザインをお願いし、この度もご一緒することができました。すべてのデザインが校了したこのタイミングで、まずは南さんの頭の中をのぞいてみたくなり、インタビューしました。

李禹煥先生に描いて頂いたドローイングを用いて、シンプルで余白があり時間を感じるアルバムのデザインを作りたいのだけれど……とご依頼を頂きました。僕が担当したのは、文字情報をミニマムなタイポグラフィーとして表現するという仕事です。

空間に響く音のように
坂本さんと空さんから、余白は大きい方が良いというコメントが届き、何もない白い空間が重要なのだというこの考え方に強い共感を覚えました。文字がホワイトスペースに響くように=空間に響く音のように。

坂本さんが過ごされた時間
このアルバムは、坂本さんが音とともに過ごした時間の中で生まれた日記のような作品です。CD Repakの表紙には、その時間の流れを表現できるように、坂本さんが過ごしたこの制作期間の日付を全て配置しました。作品が生まれた日をマーキングすると、打ち寄せる波のようなタイポグラフィが現れました。

南 琢也
グラフィックデザイナー/アーティスト。1980年代後期より様々な名義でアートティスト・コレクティブによる表現活動を行う。現在はSoftpadメンバーとして、インスタレーション、パフォーマンス、サウンド、デザイン分野などを横断しながら、それぞれのメディアの境界線と接点を探る。音・文字・グラフィックの関係性における研究を行う藤本由紀夫監修のプロジェクト「phono/graph」メンバー。DUMB TYPE、高谷史郎、池田亮司のグラフィックデザインに携わるなど、アート・音楽に関連するデザインワークを行う。
https://www.softpad.jp/

「プロダクト制作進行というのはどのような仕事内容ですか?」と聞かれることが多いのですが、デザイナーさん、印刷会社さん、プレス会社さん、社内の各部署との調整役、というのが自分的にしっくりくる説明かな、と思っています。
そして今回が3回目となる頭の中シリーズでは、『12』のパッケージの制作進行のみをピックアップし、私の頭の中を日記という形でお届けします。

プロダクト管理担当の夏から冬までの日記

  • 8月24日アルバムクレジットの第一稿がマネジメントより届く。いよいよ・・!
  • 9月8日アートワークの準備にとりかかるべく、関係者連絡用グループを作成。
  • 9月16日commmonsスタッフから印刷会社さんへ李禹煥さんのドローイングを直接お渡しし、スキャンを依頼。大緊張の瞬間。
  • 9月24日李禹煥さんのドローイングスキャンデータが到着。デザイナー南さんへ共有。南さんから「背景サイズ調整のための用紙のテクチャーのみの画像も欲しい」との依頼があり、作品の裏面もスキャン依頼へ。
    「10月上旬にパッケージ仕様の方向性を確定、10月いっぱいで入稿・カラーバイナルの色決定、11月中旬〜下旬:校了」と南さんへ伝えたが、果たしてどうなるか・・・
  • 10月2日南さんからデザイン案が届く。教授・マネジメントの確認へ。白の空間の広がりを確保できるよう、パッケージに記載する規定文(品番や権利関連表記)の配置について、社内の関係部署との調整へ。
  • 10月4日アナログ盤に封入する、教授手書き譜面のスキャンデータを南さんへ共有。
  • 10月10日南さんからデザイン第2案が届く。
  • 10月11日アナログ盤の仕様を2面から3面に変更 → 南さんへ仕様サンプルをお渡しする。
  • 10月16日カラーバイナルの色見本を確認してから色を決定することに。白と透明が候補にあがり、教授から「透明で」とのお返事。
  • 10月18日文字修正、文字修正、文字修正・・・
  • 10月21日作品を保護するバイオマスPP袋の製造発注のタイミングがせまる。仕様の確定を急がなければ。
  • 10月22日パッケージに使用する紙の提案が南さんより届く。普段なかなか使用しない紙のオンパレード。
  • 10月25日マネジメントと怒涛のチャット30分。確認ごとをささっと。
  • 10月28日南さんより紙の希望がぞくぞく届く。紙の銘柄を見ながらワクワク(予算的にはドキドキ)。
  • 10月31日プロモーションなどで使用する表1データの作成を南さんへ依頼。
  • 11月1日パッケージにかかる費用の見積もりを何度も印刷会社さんとやりとり。やっと紙が決定。
  • 11月3日アナログ盤を入れる内袋と譜面を入れる袋の試作へ。加工適正や盤の凹みが目立たないかなど、テストが山積み。
  • 11月4日CD、アナログ盤のパッケージ見本作成完了、パッケージの仕上がりサイズが決定したので、急ぎバイオマスPP袋の試作へ。
  • 11月5日李禹煥さんより「デザインを見てずっと考えていたのだが、ドローイングのポジションを15度ほど右肩上がりに傾けてはどうだろう」とのご提案。13度、14度、15度、16度、17度の中から13度で決定。CD盤面・譜面デザイン案が南さんより届く。
  • 11月9日入稿前の最後の文字修正、アナログ盤仕様の細かな試作が続く。内袋がきつくてジャケットにはいらない・・・さてどうする。紙の斤量をさげることで解決。
  • 11月10日アナログ盤(譜面以外)、CD盤入稿。
  • 11月11日南さんから夜中のお返事が続く。体調が心配だ。
  • 11月13日南さん「もともとの汚れなどはそのまま残しています。ゴミ除去完成。」→ 譜面入稿へ。
  • 11月15日CD盤の初校があがる。
  • 11月16日南さんからCD盤初校確認のきめ細やかなお返事が届く。カバーの日本語と英語の配置を変更。南さんいつ寝ているんだろう。
  • 11月17日アナログ盤の初校があがる。
  • 11月18日教授から初校についてのお返事と、譜面の封入順の指示が届く。
  • 11月19日南さんによる太陽光での初校最終チェック → 色修正とニスについての指示が届く。
  • 11月22日アナログ盤:盤面・内袋・譜面封筒校了、CD盤:Repak校了。
  • 11月23日出張を控えている南さんから深夜に「1日フライトを間違えていまして、25日に出発でした。」と驚きの連絡。再校正を1日前倒しで調整していた自分さすがと一瞬思いながらも、動揺を隠せず。
  • 11月24日再校正がぞくぞくと届く。複数の校正を受け取りながら「ご挨拶がてら、ヤクルト1000を3本お配りしております」のヤクルトさんの声に吸い寄せられるようにこちらも受け取る。南さんが明日出張へ出発してしまうため、いま進めておかなければならない案件をテトリスする。あれやこれやの作業が南さんに集中。南さんの取り合い状態に。
  • 11月25日印刷会社さんから南さんへ午前中指定で送った荷物が昼になっても配送営業所に届いていない。ぴりっと緊張が走る。慌てて問い合わせしたところ、ブラックフライデーの荷物が大量で全体的に遅れているとのこと。南さんの飛行機出発までに間に合うか・・・焦る。並行してバイク便を手配しておくべきか・・・ギリギリで到着。ひと安心。
  • 11月29日李禹煥さんから色校正のOKをいただく。本当によかった・・・・・南さんとすぐに喜びをすぐに分かち合いたいが、かなわず。譜面修正のPDF校正があがってくる。出張先の南さんへ容赦ない確認依頼が続く。
  • 11月30日CD盤カバー三校正があがる。
  • 12月2日大貫妙子さん10選に影響されてSMOOCHYをノリノリで聴いていたが、さすがにアナログ盤のジャケット、ステッカーを校了しなければならず最後の曲を聴き終え、集中して一気に全体チェック。校了する時はいつも大緊張。最後の校正はいつも「坂本龍一」「Ryuichi Sakamoto」この2つのスペルが間違っていないかを確認することにしている。
  • 12月5日CD盤、アナログ盤すべてのパーツを校了
  • 12月7日仕様書といわれる、パッケージの形態や色数、紙の銘柄、斤量、セット方法などを細かく記載する書類を作成。関係各位へ共有。

仕様詳細:
[アナログ盤]
A式ジャケット:レコードジャケットにはA式(アメリカ式)とE式(ヨーロッパ式)という種類があり、今回のアルバムではA式を採用。
A式は、印刷した薄紙を厚紙のボディーに貼り付ける二重構造。剛性が高く、紙質の選択肢も多い。
E式は、厚紙に直接印刷する構造。紙厚が薄めのため、その分開口部が柔軟でレコードの出し入れがしやすい。
紙内袋:ショーレックスは使わず、紙内袋のみを使用
譜面
アナログ
[CD盤]
Repak:環境保全に対して高い意識を持つスウェーデンで開発されたバージンパルプ100%のトレイ。ディスクのエッジをトレイに差し込むことで簡単にホールドすることが出来る。2001年発売の『ZERO LANDMINE』からRepakを採用。
カバー
CD
[アナログ盤・CD盤共通]
ステッカー:木材由来の原料を主成分とする環境にやさしいフィルムを採用
包装用PP袋:バイオマスPP袋を採用

commmonsの作品は2008年9月24日リリース以降、生産・流通・廃棄のプロセスで排出/したと推定されるCO2をmore treesで取り組む植林プロジェクトによって相殺(オフセット)しています。