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あ〜、ミュージックビデオ含め、ポップな世界観ですからね。

SKY-HI それは決して悪いことじゃないとは思うんですけど、たとえば「アイリスライト」って2番の歌をどう歌うかみたいな曲じゃないですか? でも「アイリスライト」のサビの歌のテイクは気に入ってなくて、どっちかっていうと「Ms.Liberty」や「スマイルドロップ」の方がうまくできたんです。「アイリスライト」は声にエッジをかけていない歌だから、本当は好きではないんだけど、そのほうがラブソングとして聴かれやすいんじゃないかなって判断なんです。シンガー・ソングライターの秦基博さんが「自分がつくった作品がいかに誤解されるか、いかに自分が思っていない感じで届くかがヒットだ」ってことを言っていて。そこで言えば「カミツレベルベット」はもっと誤解される可能性が高かった。自分からすると死の淵から救ってくれた1曲みたいな感じなんだけど、そんなのまったく伝える必要はないじゃないですか? ただなんとなく良い曲だなってなればいいと思うし、そうなりえる曲だったんですね。でもそれにすら届かない現状があって。それは悔しい思いをしました。

そこで感じたのは悔しさなんだね。

SKY-HI 単純に「カミツレベルベット」を出した瞬間に新しいリスナーが増えたという実感が正直あまりなくて、だからめちゃめちゃ悔しくて。社内(エイベックス)でも「カミツレベルベット」を聴いたことないって人が山ほどいて。これはやばいと思って、誤解されうる曲どころか誤解させる力すらないと思って。ただ「カミツレベルベット」をつくったときの自分の高揚感は絶対に信じたかったから、アルバムでもう一回やってやると思って。「カミツレベルベット」にたどり着くまでの心境や心情の変化を、それこそ映像化されたエンターテインメントとして昇華させてアルバムをつくることによって、俺はもう一度「カミツレベルベット」を評価させてやるぞと思って。だから悔しさなのかな。シングルが届き切らなかった悔しさが、ひょっとしたらアルバムの完成度を高めてくれたのかもしれない(笑)。

『カタルシス』は、「カミツレベルベット」へ辿り着くというアルバム構成なんですよね。

SKY-HI そのあと出したシングルたちも「カミツレベルベット」のためにつくってましたから。軸が明確だったので、レトリックを詰め込んで、すごい勢いでアルバム『カタルシス』が完成していきました。

SKY-HIのすごさって、自身で作詞作曲を手掛けていることなんですよね。だからこそ「カミツレベルベット」への思いの強さも強いんだと思います。

SKY-HI 両方あって「カミツレベルベット」はいい曲だなって客観的に思うんですけど、思い入れが伝わりすぎるのもどうかなと思っていて(苦笑)。俺のアルバムに対する思い入れがもちろん伝わらなきゃいけないのはわかるんだけど、伝わりすぎるのもいかがなものかなと。「フリージア」も超思い入れあるんですけど、「フリージア」をシングルで出して売れる日は絶対に来ないって話を木村さん(マネージャー)としていたんですよ。なぜかといったら思い入れが強すぎるからリスナーの曲になりづらいですよねって。

ポップミュージックには、リスナーが入り込める隙間が必要ってことですね。本質論ですね。

SKY-HI そう。たとえば、二人掛けのソファーに俺がどかっと座ってると座りづらいですよね? 余白がない。余白とは広がる可能性だと思うんです。そんな意味でいったら8曲目の「Young,Gifted and Yellow」は、狙いでもあるんだけどコードがぶつかっていて、音楽的にはありえない曲なんです。「Seaside Bound」もマイナーコードだしね。で、やっと「アイリスライト」で開かれる。この曲はCメジャーでつくったんですよ。音数も少ないし、この後で聴く「カミツレベルベット」は絶対に気持ち良いはずなんです。本能的に考えて気持ち良いエンディングなはず。これは俺の気持ちなだけじゃないと思っていたけど『カタルシス』のリリースで、やっぱり「カミツレベルベット」の話をしてくれる人がすごく多くて。たとえばポップな曲だから、ラッパーSKY-HIを期待してくれた人には物足りないと思っていた人も界隈ではいたと思うんだけどね。でも常にひっくり返したいって思ってるし、ひっくり返せたと思っているから。

SKY-HIは、そこをずっと求め続けていますもんね。

SKY-HI そうだね。そんなこだわりでいえば、たとえばアルバム『カタルシス』の「Luce」と「F-3」はそれぞれだったら、普通に聴けるけど、同じアルバムに入るのはありえない曲なんです。流れで成立させるためには「As A Sugar」があったり。「Count Down」にナチュラルにいくために「Ms.Liberty」から「スマイルドロップ」はつながっている必要がありました。曲間ゼロにして「スマイルドロップ」を生に差し替えて、イントロにブラスのフレーズをいれて「Ms.Liberty」は歌終わりで、ディレイが終わった瞬間に「スマイルドロップ」が始まる。2曲で1曲みたいな。「スマイルドロップ」で徐々にテンションが強くなっていくから、そこからうまいこと「Countdown」がきたときに耳がびっくりしないというか。

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