西野カナ「君って」「たとえ どんなに・・・」、BRIGHT「LOVE?ある愛のカタチ?」など、数々のヒット曲を世に送り出してきた佐伯ユウスケ。母のオーディオから流れる70?80年代のソウル、ファンクなどに熱中していた幼少期、吹奏楽部に所属していた中学高校時代を経て、「とにかく音楽が好き!」という思いひとつで本格的な音楽活動をスタートさせた。そんな彼に楽曲提供の話が舞い込んだのは、弱冠二十歳の頃。しかし順調と思えるキャリアの裏側には、大きな葛藤もあったという。
「実際に提供させて頂いた楽曲は、僕が書き溜めていた曲をアレンジしたものがほとんど。逆に『この人のために書こう!』という思いで曲を作ると力んでしまうのか、なかなか採用されないことが多かったですね。それに、作曲家の仕事と平行して自分でもライブ活動を行っていたので、いつかは自分が前に出て歌いたいという気持ちが消えることはなかった。提供した楽曲が武道館などの大きな会場で拍手喝采を浴びているのを見ていると、嬉しさ以上に『僕もあっち側の世界に行きたいな』という気持ちが込み上げてきましたね」
そうして積み上げてきた実績を武器に、ついにシンガー・ソングライターとして本格デビュー。驚かされるのは、数々の提供楽曲とはまったく異なる世界観が、7月25日リリースのデビュー・ミニ・アルバム『7つのドウキ』収録曲には鮮やかに表現されていることだ。
「全7曲のうち6曲は、今回のアルバムのために書き下ろしたものです。しかも曲を先に作っていた今までの制作スタイルを変えて、今回はすべて詞から先に作っていったんです。そうしたら、歌詞だけじゃなくサウンドにも自分の正直な感情を込めやすくなって。僕のルーツであるブラックミュージック的な要素を前面に押し出していた過去の楽曲にはなかったような、自由でポップなサウンドになりました。なので、以前の僕を知っている人には『変わったな』と思われるかもしれませんが、それも僕としては“してやったり”というか(笑)。とにかく今までの概念を取り払いたいと思って作った曲たちなので、そこから新たな佐伯ユウスケを感じてもらえたら嬉しいです」
かつてなく佐伯ユウスケの“素”が露になった、瑞々しくストレートなサウンドが満載の『7つのドウキ』。本作をもってシンガー・ソングライターとして新たな一歩を踏み出した彼の向かう先とは?
「今後はライヴを強化していきたいと思います。ライヴという生の場でも新しいことにどんどん挑戦していって、シンガー・ソングライターの概念を取っ払っていきたいなと。あとは本作で見せられていない部分がまだまだあると思うので、それをもっと見せていきたいですね。具体的に言えば、自分の中で出来上がっている曲作りのセオリーをどんどん壊していきたいなと。もちろん今まで培ってきたセオリーを壊すのは勇気もいるし、新たなものが出てくるまでには生みの苦しみもあると思うんですけど。それを乗り越えたときに、本当にいいものが出来るんじゃないかと自分でも思っているので。すべてを脱ぎ捨てて、さらにまっさらになった佐伯ユウスケの裸を今後も見せていければいいなと思います」