まるでサーカスから飛び出てきたようなド派手な衣装に身を包み、大道芸を思わす懐かしいアコーディオンのメロディを弾く姉の小春。胸をえぐるような赤裸々な歌詞を時に甘く、時に激情的に歌い上げる妹のもも。インディーズ時代から国内外のフェスに登場し、多くの有名アーティストから熱いオファーを受けるなどアーティスト名も含め、すべてが予想のナナメ上をいく姉妹デュオ、チャラン・ポ・ランタン。そんな彼女たちが遂にメジャーデビュー！と意気込みたいところだが、当の2人の回答はやっぱりナナメ上で…。

――通常、アーティストにとってメジャーデビューはひとつの区切りとなるものだが、そこにまったくこだわらないタイプもいる。それがこの2人。

小春「正直、メジャーとインディーズの明確な違いってあまり分からなかったんだよね。『おもしろいモノを作ってなんぼ』ってところだけできているんで」
もも「音楽やっている人なら、みんな知っているんでしょうけど、私たちが知らなさすぎなんですよ。でも、せっかく誘っていただいたならやりましょうか、と」

――その最新の「おもしろいモノ」がメジャー1stアルバム『テアトル・テアトル』。メジャー1stシングルとなった『忘れかけてた物語』をはじめ、ハマ・オカモト（OKAMOTO’S）とUCARYがサウンドプロデュースに入った『ワーカホリック』、ライヴではテッパンソングとされている『愛の賛歌』のカヴァ―など、彼女たちの衣装の如くカラフルかつ、個性的な曲が凝縮されている。

小春「“アルバムを作る”というよりも、とにかく曲を作ってその中から入れたいものを集めた感じ。でも、これをどうまとめるかってところで一苦労したんだけど」
もも「曲順もかなり揉めましたね。順番を入れ替えるだけで一枚の流れがまったく変わるので。ただ、リード曲の『71億ピースのパズルゲーム』は“これはオープニングの曲だね”と2人の意見が合いました」
小春「アルバムを作る際、全体の流れはすごくこだわるの。今回だと、オープニング曲の最初の歌詞が『さぁ、始めましょう』で、ラストの曲の歌詞の頭は『今日で終わりにしたいわ』とか。このアルバムで短編映画を観ているような気になってもらえればと思ってる」

――制作スタイルは作詞作曲を小春が担当し、ももが声を入れることで躍動感を吹き込む。

小春「基本、譜面は作らないの。歌詞だけ書いて、私が歌ったデモ音源をももさんに渡して2人で合わせていく。『ワーカホリック』ではブラスセクション部分を仮で「チャーラチヤラッチャ〜」と私が歌って渡したら、ももさんがそのまま歌ったり」
もも「小春さんの歌声ブラスがかなりシュールだったので、おもしろいなと思ってブラスは入れずにそのまま歌っちゃいました。ただ、夜中に音源作っているから大きな声が出せないらしくて、デモの歌声がどんどん小さくなって、何を言っているか分からない時もある（笑）」

――チャラン・ポ・ランタンの魅力といえば、小春が生み出す笑顔で突き刺すような陽気な痛みを持った歌詞だ。例えば、美しくなりたい女性が身体にメスを入れていく姿を綴った『美しさと若さ』。

小春「最近、恵まれた状態なのに不満そうな人が多い。十分カワイイのに「私ブスだから」とか言っちゃう人。みんなキレイになるためにスゴく努力をしているけど、その努力がどんどんズレて変な方向にいっちゃっているなと感じてたの。それを歌いたくて」
もも「最初、この曲を聴いたときは怖くて震えが止まりませんでしたね。基本的に小春さんが書いた詞に関して、どんな思いで書いたとか情報共有はしないようにしているんですけど、これは何か迫るものがあった」
小春「自分が書いた詞を自分で歌うと感情移入しすぎて生々しくなっちゃうんだよね。だからももさんを通すことで、もっと軽く聴いてもらえる」
もも「小春さんの昔の男への怨念とか聞きたくないでしょうからね（笑）」

――インタビューでも息の合った姿を見せてくれているが、性格は真反対だそう。

小春「人との付き合い方が一番違うかな。例えば、携帯の履歴が私は親とももさんとマネージャーぐらいからしかないけど、ももさんはしょっちゅう携帯が鳴るもんね」
もも「鳴るでしょ、普通。この人、2月の履歴がまだ残っていますから。今、11月ですよ！」
小春「私たちの衣装は母親と3人で作るんだけど、今日しているヘッドドレスやタイツは私が作っているの。友達作りは得意じゃないけど、モノづくりは得意」
もも「私は何が得意かな？」
小春「世渡り（即答）」

――メジャーデビューと共にレコード会社も移籍。その移籍先がエイベックスということでファンからは色々な声が寄せられたという。

もも「いままでコアなところにいたのに、メジャーデビューした上に大きな会社に行っちゃってチャランポが変わるんじゃないかってよく言われるんですよ。エイベックスって色黒でつま先が尖った靴を履いている人たちがいっぱいいるところでしょって（笑）」
小春「人のつま先なんて見てないし（笑）。私たちが音楽のふり幅を広げる為に意識的に楽曲を替えたことを“メジャーデビューして、レコード会社が変わったからチャランポも変わった”と言われるのは納得がいかない。チャランポの音楽が他人の手によって変わることはないから」

インタビュー中も「何かしでかしてくれる」感たっぷりのチャラン・ポ・ランタン。まずはこのアルバムで彼女たちの“渾身のしでかし”を聴いてほしい。